日本薬理学雑誌
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椎骨および総頸動脈閉塞による脳虚血モデルラットの生理学的ならびに生化学的検討
武 陽明山崎 直樹福田 尚久佐治 美昭名川 雄児
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1984 年 84 巻 6 号 p. 471-482

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抄録

両側椎骨動脈を電気焼灼したラットを用いて,その翌日両側総頸動脈を一時的に閉塞することにより脳虚血モデルを作製した.この脳虚血ラットにおいて,血流再開後の一般症状ならびに電気生理学的および生化学的パラメータの変化を検討することにより脳虚血モデルとしての特徴づけを試みた.両側総頸動脈閉塞(脳虚血)により,直ちに立ち直り反射(RR)が消失し,大脳皮質脳波活性は完全に平坦化した.10および30分間の脳虚血時,血流再開直前では大脳におけるATP含量は著明に減少し,乳酸含量は著明に増加した.10分間脳虚血群においては,血流再開後,ATP含量は速やかに回復し,続いてRRおよび乳酸含量が,最後に脳波活性が回復した.30分間脳虚血群では,血流再開後における前述のパラメータの回復には長時間を要し,特に脳波活性の回復が不良であり脳細胞の電気的活性の不可逆的障害をある程度は伴っていることが推察された.この30分間脳虚血群では,大脳において軽度な脳浮腫が認められた.一方,橋+延髄におけるATP含量は,30分間脳虚血によってもほとんど減少することはなく,また聴性脳幹誘発反応(ABER)も,30分間脳虚血によって潜時が延長しただけであり,しかも,血流再開によりその変化はほぼ回復したことなどから,下位脳幹は大脳に比較して虚血処置の影響を受け難いことが示唆された.

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