抄録
human calcitonin(HCT)の抗侵害刺激作用について,マウスおよびラットを用い,種々の試験法に従って,porcine calcitonin (PCT)と比較検討し,morphine (Mor)鎮痛に及ぼすHCTの影響についてもPCTと比較検討した.HCT(0.007~0.071 mg/マウス)の脳室内投与によって,tail-pinch侵害刺激に対する反応時間は,軽度で短時間の作用持続ながら用量依存傾向のある延長傾向を示し,酢酸writhingの発現も用量依存的に抑制された.tail-pinch侵害刺激反応に対する脳室内HCT作用は,脳室内PCT(0.5~3 U/マウス)作用と同程度であったが,脳室内HCTのwrithing抑制作用は,脳室内PCTのそれに比しやや軽度であった.HCT 0.071~7.1 mg/kgおよびPCT 10~1000 U/kgは,皮下投与によっても,tail pinch侵害刺激反応および酢酸writhingに対して用量依存的な抑制作用を示し,HGT作用はPCTのそれと同程度であった.HCTおよびPCTの脳室内ならびに皮下投与共に,tail-Hick法においては抗侵害刺激作用を示さなかった.ラットにおいても,HCT 0.071~7.1 mg/kg皮下投与は圧侵害刺激反応閾値を軽度ながら上昇させ,このHCT作用はPCT 10~1000 U/kg(皮下)作用と同程度であった.マウスのtail-pinch法ならびに酢酸writhing法におけるHCTおよびPCTの皮下投与作用に,それぞれの皮下連投効果は認められなかった.HCTおよびPCTの14日間皮下連投によって,コントロールtail-pinch侵害刺激反応時間は短縮傾向を示し,特にPCT連投後において明らかであった.HCTおよびPCTの抗侵害刺激作用は,脳室内投与によるwrithing抑制作用において最も明らかであり,脳室内投与によるwrithing抑制作用は,naloxoneによって拮抗されなかった.tail-pinch法によるMor 1および3 mg/kg(皮下)作用は,HCT 7.1 mg/kg皮下同時投与によって増強され,HCT 0.71 mg/kg/day14日間皮下連投によって抑制される傾向にあった.HCTの抗侵害刺激作用とMor鎮痛に及ぼす影響について明らかにし,HCT作用におけるCaの関与について考察した.