日本薬理学雑誌
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AspirinとSalicylic acidの抗炎症・鎮痛作用
樋口 昭平長田 祐子塩入 陽子田中 伸子小友 進相原 弘和
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1985 年 85 巻 1 号 p. 49-57

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抄録
carrageenin足浮腫,綿球肉芽腫に対し,aspirinとsodium salicylateは同等の抑制作用を示した.一方,紫外線紅斑およびarachidonic acid皮膚発赤に対してはaspirinが抑制作用を示したのみで,sodium salicylateは抑制作用を示さなかった.carrageenin+prostaglandin E1足浮腫に対し,aspirinとsodium salicylateはいずれも同等の抑制作用を示した.これらのことは,aspirinのcyclo-oxygenaseのアセチル化によるprostaglandins生合成阻害は,その血管透過性亢進および肉芽腫増殖反応の抑制作用,すなわち抗炎症作用には大きくは寄与しておらず,aspirinは主にsalicylic acidとして抗炎症作用を発揮し,その作用は,cyclo-oxygenase阻害によるprostaglandins生合成阻害のみでは説明することはできない.adjuvant関節炎疼痛法および炎症足破行法において,aspirinの鎮痛作用は,sodium salicylateの作用に比べ約5倍程度強いものであった.炎症足破行法において,炎症部位へのprostaglandin E2の注射によってaspirinの効果がsodium salicylateの効果のレベルにまで減弱した.一方,sodium salicylateの効果はほとんど影響をうけなかった.これらのことから,aspirinは炎症局所でのアセチル化によるprostaglandins生合成阻害に起因する作用とsalicylic acidとしての両方で鎮痛作用を発揮していると考えられ,また,salicylic acidの鎮痛作用は,炎症局所のprostaglandins生合成阻害のみでは説明できないと考えられる.
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