日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
85 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 大西 治夫, 矢野 崇, 加藤 克明, 稲場 均, 小雀 浩司
    1985 年 85 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    ヒト尿中トリプシンインヒビター(MTI)の抗手術侵襲作用について検討した.マウスに開腹手術を行うと,食細胞機能および抗体産生能が低下し,これらに起因すると思われる感染抵抗力の減少や内在する腫瘍の急速な増殖,ならびに,体蛋白の異化亢進および腎機能の低下に基づく血中尿素窒素の上昇,骨格筋蛋白分解酵素活性の増大およびPSPクリアランスの低下などの侵襲が認められた.MTIはこれらの手術侵襲を総合的に改善することから単にトリプシンを阻害するだけでなく,生体のホメオスターシスと関連する多彩な薬理作用を持つものと思われた.
  • 西依 健, 土屋 博司, 稲垣 直樹, 永井 博弍, 江田 昭英
    1985 年 85 巻 1 号 p. 7-16
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    気管支喘息の治療に用いられている漢方方剤,柴朴湯のI型アレルギー反応に及ぼす影響を検討した.1) 抗DNP-As·IgE血清を用いたラットの48時間homologous PCAは,柴朴湯200 mg/kgの反応惹起30分~2時間前の経口投与によって軽度抑制の傾向を示した.また,同抗血清で感作したラットの腹腔内histamine遊離は,反応惹起2時間前の投与によって抑制傾向を示した.2) 抗BPO-BGG·IgE血清を用いたモルモットの7日間homologous PCAは,柴朴湯200および500 mg/kgの反応惹起2時間前の投与によって有意に抑制された.また,同抗血清を用いたモルモットの実験的喘息は,柴朴湯200 mg/kgの経口投与によって呼吸数および呼吸流量の減少が有意に抑制され,500 mg/kgでは呼気/吸気の増加も有意に抑制された.感作モルモットの摘出気管筋標本のSchultz-Dale反応は,10-4g/ml柴朴湯の前処置によって有意に抑制され,また,感作モルモット肺切片からのhistamine遊離も10-6~10-4g/ml柴朴湯の前処置によって用量依存的に抑制されたが,SRS-A遊離に対しては影響がみられなかった.total mediatorによるモルモット回腸の収縮は,柴朴湯の前処置によって影響がみられなかった.以上のように,柴朴湯のI型反応に対する抗アレルギー作用には種属差がみられ,ラットの系に比してモルモットの系に対して強い抑制作用を示した.その主要な機序はヒスタミン遊離抑制作用によるものと思われる.
  • 鈴木 勉, 嶋田 光哉, 吉井 利郎, 川村 誠, 柳浦 才三
    1985 年 85 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    morphine混入飼料で飼育した動物を用いて,自然休薬を行う時間あるいはnaloxoneを投与する時間と退薬症候の関係を検討した.morphine混入飼料(1 mg/g food)で65匹のラットを7日間飼育し,1群5匹として使用した.飼育8日目の20時,9日目の2時,8時および14時に1群はmorphine混入飼料を普通飼料に変えて自然休薬を行い,別の1群にはnaloxone 3 mg/kgをそれぞれ皮下投与した.自然休薬を行った群では,14時に休薬した群が休薬後24時間になるまで2時間間隔で各群の体重測定と行動観察を行った,20時の体重を基準にして各群の休薬24時間後の体重減少を比較すると,いずれの群も約10%であり,8時,2時,14時,20時休薬群の順に減少率がわずかに大きくなるが,著明な差はみられなかった.しかし,morphine依存ラットもまた体重の日内変動を示し,明期に減少,暗期に増加を示す.そこで,明期から暗期へ移行する時間帯での休薬が退薬症候としての体重減少を最も明確にとらえられる.一方,morphine混入飼料で飼育したラットにnaloxoneを投与した各群では,行動観察を1時間,体重測定を3時間行った.naloxone誘発退薬症候は暗期が強く,明期が弱い傾向を示し,8時にnaloxoneを投与した群が最も強い退薬症候を示した.また,morphine混入飼料でラットを7日間飼育し,8日目の20時,9日目の2時,8時,14時の各時間に断頭採血し,血漿中morphine濃度を測定した.血漿中morphine濃度は摂餌行動にほぼ対応し,暗期(2時と8時)に高く,明期(20時と14時)に低い値を示した.以上の結果より,自然休薬はどの時間帯に休薬を行っても退薬症候は同程度であるが,体重減少を退薬症候の指標とする場合には,明期から暗期へ移行する時間帯での休薬が適当であることが示唆できる.さらに,naloxone誘発退薬症候の強度はnaloxoneの投与時間によって異なり,血漿中morphine濃度とほぼ対応することが示唆された.
  • 小畑 俊男, 平井 隆文, 小林 真一, 庄 貞行, 安原 一
    1985 年 85 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    モルモットの脳,肝臓および腎臓ミトコンドリア中に含まれるtype B MAOの分子量を,3H-pargylineの結合実験より測定し,これらがすべて同一であるか否か,またtype B MAOの生体内での存在状態を比較検討した.分子量の測定に先立って指標として用いたそれぞれの濃度の3H-pargylineがtype B MAOに特異的に結合していることをpargylineの5-HT(type A MAOの基質)とβ-PEA(type B MAOの基質)に対する阻害曲線より確かめた.またpargylineはFADを含むMAOと1:1の分子比で非可逆的に結合する性質を利用して各臓器ミトコンドリァと3H-pargylineを37°Cで5時間反応させることによりtype B MAOに特異的にかつ非可逆的に結合させ,このサンプルをSDSディスク電気泳動でMAOの分子量を測定したところ各臓器とも6% SDSで溶解処理すると分子量6万の単一・ピークとして得られたが2% SDSで溶解処理すると各臓器とも6万より高分子側に数本のピークが得られた.肝臓では12万と24万に,腎臓では18万にピークが得られたことより,type B MAOはそれぞれdimer,trimerで存在し,そのサプユニットは分子量6万である可能性が示唆された.一方,脳では6万の他に10万にピークが得られたことより,FADをもつ6万とFADを持たない6万以下のサブユニットとのdimerで存在していると思われる.
  • 山本 博之, 尾崎 昌宣, 岸岡 史郎, 井口 賀之, 田村 定子
    1985 年 85 巻 1 号 p. 33-48
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    human calcitonin(HCT)の抗侵害刺激作用について,マウスおよびラットを用い,種々の試験法に従って,porcine calcitonin (PCT)と比較検討し,morphine (Mor)鎮痛に及ぼすHCTの影響についてもPCTと比較検討した.HCT(0.007~0.071 mg/マウス)の脳室内投与によって,tail-pinch侵害刺激に対する反応時間は,軽度で短時間の作用持続ながら用量依存傾向のある延長傾向を示し,酢酸writhingの発現も用量依存的に抑制された.tail-pinch侵害刺激反応に対する脳室内HCT作用は,脳室内PCT(0.5~3 U/マウス)作用と同程度であったが,脳室内HCTのwrithing抑制作用は,脳室内PCTのそれに比しやや軽度であった.HCT 0.071~7.1 mg/kgおよびPCT 10~1000 U/kgは,皮下投与によっても,tail pinch侵害刺激反応および酢酸writhingに対して用量依存的な抑制作用を示し,HGT作用はPCTのそれと同程度であった.HCTおよびPCTの脳室内ならびに皮下投与共に,tail-Hick法においては抗侵害刺激作用を示さなかった.ラットにおいても,HCT 0.071~7.1 mg/kg皮下投与は圧侵害刺激反応閾値を軽度ながら上昇させ,このHCT作用はPCT 10~1000 U/kg(皮下)作用と同程度であった.マウスのtail-pinch法ならびに酢酸writhing法におけるHCTおよびPCTの皮下投与作用に,それぞれの皮下連投効果は認められなかった.HCTおよびPCTの14日間皮下連投によって,コントロールtail-pinch侵害刺激反応時間は短縮傾向を示し,特にPCT連投後において明らかであった.HCTおよびPCTの抗侵害刺激作用は,脳室内投与によるwrithing抑制作用において最も明らかであり,脳室内投与によるwrithing抑制作用は,naloxoneによって拮抗されなかった.tail-pinch法によるMor 1および3 mg/kg(皮下)作用は,HCT 7.1 mg/kg皮下同時投与によって増強され,HCT 0.71 mg/kg/day14日間皮下連投によって抑制される傾向にあった.HCTの抗侵害刺激作用とMor鎮痛に及ぼす影響について明らかにし,HCT作用におけるCaの関与について考察した.
  • 樋口 昭平, 長田 祐子, 塩入 陽子, 田中 伸子, 小友 進, 相原 弘和
    1985 年 85 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    carrageenin足浮腫,綿球肉芽腫に対し,aspirinとsodium salicylateは同等の抑制作用を示した.一方,紫外線紅斑およびarachidonic acid皮膚発赤に対してはaspirinが抑制作用を示したのみで,sodium salicylateは抑制作用を示さなかった.carrageenin+prostaglandin E1足浮腫に対し,aspirinとsodium salicylateはいずれも同等の抑制作用を示した.これらのことは,aspirinのcyclo-oxygenaseのアセチル化によるprostaglandins生合成阻害は,その血管透過性亢進および肉芽腫増殖反応の抑制作用,すなわち抗炎症作用には大きくは寄与しておらず,aspirinは主にsalicylic acidとして抗炎症作用を発揮し,その作用は,cyclo-oxygenase阻害によるprostaglandins生合成阻害のみでは説明することはできない.adjuvant関節炎疼痛法および炎症足破行法において,aspirinの鎮痛作用は,sodium salicylateの作用に比べ約5倍程度強いものであった.炎症足破行法において,炎症部位へのprostaglandin E2の注射によってaspirinの効果がsodium salicylateの効果のレベルにまで減弱した.一方,sodium salicylateの効果はほとんど影響をうけなかった.これらのことから,aspirinは炎症局所でのアセチル化によるprostaglandins生合成阻害に起因する作用とsalicylic acidとしての両方で鎮痛作用を発揮していると考えられ,また,salicylic acidの鎮痛作用は,炎症局所のprostaglandins生合成阻害のみでは説明できないと考えられる.
feedback
Top