日本薬理学雑誌
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実験肝障害ラットの凝固系に対する局所用トロンビン腹腔内注射の影響 ―トロンビン局所療法によるDIC惹起の可能性について―
石井 秀美久保木 正明大倉 実平石 さゆり坪内 二郎風間 睦美
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1985 年 85 巻 2 号 p. 97-110

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抄録
局所用トロンビンは局所的止血剤としての有効性が知られているが,本剤使用後稀にショック,アナフィラキシーあるいは汎発性血管内血液凝固症候群(DIC)の合併をみることが報告された.凝固因子であるトロンビンは,血流中への流入によりDICを惹起する可能性がある.本研究では腹腔内にトロンビンを注入した際にDICが起る可能性につき,ラットを用いて実験的に検討した.体重200gウィスター系ラットに四塩化炭素0.12 ml/匹を週2回,12週腹腔内注射して肝硬変を,四塩化炭素0.30 ml/匹の1回腹腔内注射により急性肝障害を作成した.これらに種々の量のトロンビン局所用(Parke-Davis)を腹腔内注射し,90分までの種々の時点で心採血,屠殺して各種凝血学的検査を行なった.未処置対照群および肝硬変群では血小板数の一過性の増加をみたのみでフィプリノーゲン,プロトロンビン時間(PT),活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)には有意の変動を認めなかった.四塩化炭素注射後24時間あるいは48時間後の急性肝障害群につき同様に検討すると,血小板やフィブリノーゲンの減少,PTおよびAPTTの延長が認められ,ことに48時間群でこの傾向が著しかった.また48時間群にトロンビン局所用20,100,1,000 U/100 gを注入すると用量依存性に上記の指標が変動し,血清GPT値も用量依存性に上昇した.一方本製剤からトロンビンを除去した非トロンピンタンパク分画(トロンビン900 U相当)を48時間群に注射すると上述の諸指標はほとんど変化せず,GPTの上昇のみが認められた.以上の成績から腹水を貯留する程度の急性肝障害では腹膜の透過性亢進のために腹腔内に注入されたトロンビンが血流中に侵入して,DIC様の凝血学的所見を現わしたと考えられたが,臨床的にみられる烈しいショックや即時的DICは認められず,後者の合併としてはアナフィラキシーの如き機序を考慮する必要があると考えられた.
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