日本薬理学雑誌
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実験的即時型および:遅延型アレルギーモデルにおける,ライソソーム酵素活性の変動
井上 肇吉川 典孝大西 栄子瀬山 義幸山下 三郎
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1985 年 85 巻 2 号 p. 91-95

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抄録

アレルギー性疾患モデルとして用いられている,即時型のアレルギー性喘息モデル,遅延型の実験的アレルギー性脳脊髄膜炎(EAE)を用い,喘息発作時の肺および血清中ライソソーム酵素活性と,EAE発症時の脳内および血清中ライソソーム酵素活性値の変動を検討した.ライソソーム酵素活性は,β-glucuronidasc(β-G)と,arylsulfatase(AS)を蛍光法によって測定した.その結果,喘息モデルにおける肺ライソソーム酵素活性は,いつれも対照群に比ぺ,有意な差はなかった.しかし,EAEでは,脳内ライソソーム酵素活性は,EAE発症後1日目で対照群に比べ有意に上昇した.また,発症後2日目では,β-G活性が有意に上昇し,AS活性は上昇傾向にあった.一方,血清ライソソーム酵素活性には,一定の傾向はみられなかった.以上の事から,アレルギー性疾患モデルにおいて,ライソソーム酵素は,I型の即時反応に関与するよりも,IV型の遅延型反応に関与している可能性が示唆された.又,EAEにおけるβ-G,AS活性の上昇は,中枢神経髄鞘の脱落つまり脱髄に関与している可能性も示唆された.

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