日本薬理学雑誌
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ポドフィロトキシン誘導体VP16-213の抗腫瘍効果
森田 真寿行櫨 彰後藤 新服部-今泉 尚美長谷川 嘉成
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1986 年 87 巻 1 号 p. 53-66

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抄録

新規抗腫瘍物質であるVP16-213(VP-16)のマウス実験腫瘍に対する効果を単独投与および他の抗腫瘍剤との併用により検討した.Ehrlich carcinoma(Ehrlich癌)およびsarcoma 180の腹水型腫瘍および固型腫瘍に対し,VP-16の腹腔内,静脈内あるいは経口のいずれの投与経路においても用量に依存した効果が得られ,特に,Ehrlich癌に対して高い効果が得られた.ELI-LP-12の静脈内移植腫瘍,P388およびB16 melanomaの腹腔内および皮下移植腫瘍,Lewis lung carcinomaおよびcolon 38の皮下移植腫瘍,colon 26の腹腔内移植腫瘍に対しても有効であった.しかし,B16 melanoma,Lewis lung carcinomaおよびcolon 26に対しては,経口投与では静脈内および腹腔内投与と比べ高用量にもかかわらず効果が得られなかった.Ehrlich癌固型腫瘍を用いて,VP-16経口投与時の至適投与スケジュールを検討した結果,腫瘍細胞移植24時間目(day 1)の1回投与,あるいは24時間目および5日目(days 1 and 5)の2回投与の方が24時間目,3日目および5日目(days 1, 3 and 5)の1日おき3回投与や翌日からの5日間連続(days 1~5)投与より優れた効果が得られた.また3日目(day 3),または5日目(day 5)の各1回投与では,day 1に比べて効果は減少するが,高用量で有意な抑制効果が認められた.投与間隔を短くすると死亡例は増加するのみで抗腫瘍効果は逆に減少することが判明した.Ehrlich癌固型腫瘍およびEL-LP-12静脈内移植腫瘍を用いたVP-16と他の抗腫瘍剤との併用実験では,cycloPhosPhamide,BCNU,mitomycin Cあるいはcisplatinとの組合せで相加的あるいはそれ以上の効果が得られた.

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