日本薬理学雑誌
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新規麻酔導入剤Midazolamの薬物依存性試験について
久保田 新桑原 明彦八景 正乃中村 圭二
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1986 年 88 巻 2 号 p. 125-158

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抄録

水溶性benzodiazepineで,短時間作用型の静注用麻酔導入剤midazolamの薬物依存性を,カニクイザルを用い静脈内投与により検討した.主対照薬はtriazolamとし,各被験薬の用量は中枢抑制最小量の1/3を中心とした.sodium pentobarbital 0.6~1mg/kg/inj を自己摂取する動物の交差自己摂取試験のうち,総量制限付きFRlでは自己摂取を維持した動物が5例中4例(80%)をこえる最小用量は,midazolam 0.01,triazolam 0.001mg/kg/inj で,chlordiazepoxide 0.03~3mg/kg/inj では40%をこえず,flurazepam 1 および3mg/kg/injは自己摂取を維持しなかった.時間制限付きFR10では6例中5例(83%)をこえる最小用量はmidazolamが0.03,triazolamが0.003mg/kg/inj であった.日内累進比率試験では,midazolamの自己摂取維持能はtriazolamと同程度かより弱かった.薬物自己摂取開始能試験では,各薬物各4例中midazolam(0.003~0.1mg/kg/inj)で3例,triazolam(0.0003~0.01mg/kg/inj)で1例が自己摂取を開始したが,摂取回数はpentobarbital(0.1~3mg/kg/inj,4例全例が開始)より低く,溶媒レベルに近かった.pentobarbitalで身体依存を形成した7例の動物の単一用量抑制試験では,midazolamの抑制は不完全でそのED値は0.36mg/kgで,triazolamの0.02mg/kg,pentobarbitalの2.45mg/kgと異なり,25%中枢抑制用量を上回った.各4例の動物でmidazolam,triazolam,pentobarbital(中程度中枢抑制用量1日2~3回,すなわち,0.9,0.09,60mg/kg/day)の4週間連投後禁断症状が認められた動物はそれぞれ0,1,3例,高用量(同単位用量1日4回;1.2,0.12,80mg/kg/day)の2週間連投後では1/3,2/3,3/4例であった.更に同用量を2週間連投後休薬し,拮抗薬Ro15-1788を1ないし3mg/kg,i.v.投与した各3例中,triazolamでは2例に禁断症状が誘発されたがmidazolamでは1例にも認められなかった.

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