日本薬理学雑誌
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5-HT取込に対する新抗うつ薬Paroxetineの特異的薬理作用
谷垣 範子萬野 賢児杉原 邦夫三木 直正市田 成志吉田 博
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1987 年 89 巻 4 号 p. 175-180

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抄録

serotonin(5-HT),noradrenaline(NA)およびdopamine(DA)の取込ならびに各種神経受容体に対する新しい抗うつ薬paroxetineの影響を調ぺ,三環系抗うつ薬であるamitriptyline,chlorimipramineおよびimipramineの作用と比較した.paroxetjneは5-HT取込阻害作用が強く,NA/5-HT比は886であった.これに較べてamitriptyline,chlorimipramineならびにimipramineは,それぞれ1.7,15および1.5であった.一方,paroxetineは今回調べた[3H]標識化合物([3H]-quinuclidinyl benzilate,[3H]5-HT,[3H]ketanserin,[3H]pyrilamine,[3H]dihydroalprenolol,[3H]prazosin,[3H]clonidineおよび[3H]spiroperidol)結合に対する阻害作用はほとんど認められなかった.これに較べて対照薬である三環系抗うつ薬3種はいくつかの結合に対して阻害作用を示し,特に副作用と関連するムスカリン,ヒスタミン-1,α1-アドレナリン受容体に対して比較的強い親和性を示した.以上の結果より,paroxetineは各種神経受容体に対する親和性は弱く,特異的に5-HT取込を阻害するといえる.

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