新生仔期に0.5,1あるいは2μg/gのthyroxine投与により甲状腺機能低下状態としたwistar-今道系ラット(Neo-0.5T
4,Neo-1T
4,Neo-2T
4)を用いて乳仔期から成熟期に至る行動発達を主として検討した.15日齢のNeo-T
4ラットの血中T
4レベルは幼若期前処置T
4量に依存して有意に低値であったがその変化は62日齢で軽度となった.オープン・フィールドテストにおいてNeo-T
4ラットのambulationとrearingは13日齢から19日齢で対照群(N)に比して著明な増加を示し,62日齢では低下傾向にあった.Neo-T
4群の sniffing down 数が17,30日齢においてN群より著しい増加を示した.特に雄における増加が大きかった.apomorphine(17日齢0.1mg/kg,30日齢0.3mg/kg,成熟期0.5mg/kg,s.c.)投与後の sniffing down 数増加がN群に比しNeo-T
4群の17日齢雄,成熟雌雄において小さかった.特に17日齢Neo-1T
4雄の反応低下は著明であった.14週齢においてTRH(20mg/kg,i.p.)投与後にNeo-1T
4雄ラットのみ体温上昇を示さなかった.以上の結果より,新生仔期thyroxine投与による甲状腺機能低下ラットにおいては自発運動の生後発達が初期の促進から低下に移行しその変化は成熟期に軽減すること,apomorphineによる sniffing down 発現頻度の低下も成熟期にかけ軽減することが明らかとなった,しかし一方でthyroxine高用量ではTRHの体温上昇反応に関連した体温調節系の変化が成熟期に認められたことから過量の甲状腺ホルモンは,その用量と新生仔脳部位機能分化の程度の差とによって,また,雌雄によっても異なることが示唆された.
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