1987 年 89 巻 5 号 p. 253-259
肝臓から細胞膜分画を調製し,これに対する125I-epidermal growth factor (125I-EGF)の結合能を正常ラットとstreptozotocin糖尿病ラットの問で比較した.その結果,125I-EGFの結合は糖尿病ラットで明らかに低下していることがわかった.糖尿病ラットの結合は正常レベルの約60%であった.Scatchard解析による結果から,結合の低下は受容体の親和性の低下によるものではなく,受容体数の減少によるものであることが明らかとなった.糖尿病ラットにインシュリンを投与すると,受容体数は正常レベルにまで回復した.しかし,生理濃度のtriiodothyronineの投与は,受容体数に影響をおよぼさなかった.血中のEGF量は,正常,糖尿病およびインシュリン処理糖尿病ラットの間でほぼ同程度であった.以上の結果から,in vivoでのインシュリンの欠如は,肝臓のEGF受容体数を減少させることが強く示唆された.