1987 年 89 巻 5 号 p. 269-277
新規の非ステロイド系抗炎症物質TAの抗炎症,鎮痛および解熱作用を実験動物において検討した.マウス酢酸誘発血管透過性亢進ラットcarrageenin足浮腫形成およびモルモット紫外線紅斑形成に対してTAはそれぞれ40~160mg/kg,10~40mg/kgおよび10~40mg/kgの用量で用量依存的な抑制作用を示した.histamineによるラット皮膚血管透過性亢進に対しては,TAは200mg/kgの用量でも抑制作用を示さなかった.ラットでのcotton pellet肉芽腫およびadjuvant関節炎に対してそれぞれ50mg/kgおよび25mg/kgのいずれも6日間の連続投与によって有意な抑制作用を示した.マウス酢酸誘発writhing法,Randall-Sellitto法およびadjuvant関節炎疼痛法においてTAは,50~200mg/kgの投与量で用量依存的な鎮痛作用を示した.マウスでの圧刺激法におけるTAの鎮痛作用は他の抗炎症薬と同様に弱いものであった.酵母発熱ラットにおいて,TAは10~80mg/kgの用量で解熱作用を示した.以上のようにTAは実験動物において,ibuprofenよりもいくぶん劣る抗炎症,鎮痛および解熱作用を示し,他の非ステロイド系抗炎症薬と同様に抗炎症,鎮痛および解熱作用をもつことが示唆された.TAはラットおよびマウスにおいて胃障害作用を示し,その程度はibuprofenの1/2(ラット)および1/4(マウス)であり,その薬効から予測されるよりも弱い傾向であった.TAは塩酸による胃粘膜障害を用量依存的に軽減し,胃粘膜に対する保護的作用をもつことが示唆された.