抄録
左心室の弛緩障害に対する細胞内Ca遊出阻害薬 8-(N,N-diethylamino)-octhyl-3,4,5-trimethoxybenzoate (TMB-8)の効果を検討する目的で,イヌに左室全冠動脈血流量の減少とペーシング頻度の増加による左室global ischemiaを作成した.このモデルにおいては,左室弛緩能の一指標であるTの増加と左室拡張終期圧(LVEDP)の上昇が発現し,虚血による左心室弛緩障害がみとあられた.これに対し,TMB-8の30,100μg/minの冠動脈内持続投与はTとLVEDPの増加を用量依存性に抑制した.一方,冠血流量はTMB-8によって影響をうけなかった.以上のことから,TMB-8は虚血に伴う左心室弛緩障害を改善することが明らかになった.冠血流量がTMB-8により影響を受けなかったことから,TMB-8の作用は血流改善を介したものでなく,虚血心筋細胞内のCa過剰の抑制作用を介したものと考えられた.