日本薬理学雑誌
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91 巻, 3 号
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  • 芦田 豊, 村上 元庸, 水野 雅博, 斉田 宏, 三宅 健夫
    1988 年 91 巻 3 号 p. 121-127
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    新規抗潰瘍薬mezolidon (KM-1146,2-(3,4-dimethoxyphenyl)-5-methylthiazolidine-4-one)の作用機序を調ぺる目的で,ラット水浸拘束ストレス潰瘍モデル(3時間)を用いて潰瘍係数,胃粘膜血流(レーザードップラー法),胃粘膜電位差,胃・十二指腸粘膜表面pHおよび血液粘度について検討した.対照群では水浸3時間後には肉眼的に粘膜障害が発生し,胃粘膜血流は前値の40%まで,胃粘膜電位'1差は48%まで低下した.mezolidon 300mg/kgの前処置により粘膜障害の発生は有意に予防され,胃粘膜電位差の低下は前値の75%と対照群に比し有意に抑制された.胃粘膜血流は水浸開始後20分および30分に前値に比しそれぞれ120%,119%と有意に増加したのち漸減したが,3時間後でも67%と対照群に比し有意の高値を示した.一方,胃・十二指腸粘膜表面pHは対照群では非ストレス負荷群に比し十二指腸で有意の低下を認めたが,mezolidon投与群では各部位において対照群と差がみられなかった.水浸拘束ストレスにおける胃粘膜血流の低下は深部体温の低下に伴う全血の血液粘度の上昇もその一因であるため,血液粘度への影響を検討したが,mezolidonは低体温負荷による血液粘度上昇に対して改善作用を示さなかった.以上より,mezolidonの抗潰瘍作用の一部に.胃粘膜血流の増加・維持作用が関与している可能性が考えられたが,血流への作用が何を介するかについては今後の検討が必要である.
  • 森下 信一, 齋藤 隆, 庄司 政満, 平井 康晴, 田中 陽
    1988 年 91 巻 3 号 p. 129-140
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    牛黄,人参製剤“霊黄参”の薬理作用を検討した.霊黄参の投与により血小板凝集抑制,SHRの高血圧低下,末梢神経麻痺からの回復促進,脳障害保護,下熱,酢酸ライジング抑制,筋肉疲労回復促進,抗ストレス潰瘍,CCl4およびガラクトサミン肝炎抑制,高齢マウスの学習能力促進などの作用が認められた.牛黄と人参は高血圧低下,脳障害保護,酢酸ライジング抑制,筋肉疲労回復,CCl4誘発肝炎抑制などの作用において相乗的に作用していることが示唆された.
  • 蘇木 宏之, 内田 康美, 東丸 貴信, 杉本 恒明
    1988 年 91 巻 3 号 p. 141-150
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    左心室の弛緩障害に対する細胞内Ca遊出阻害薬 8-(N,N-diethylamino)-octhyl-3,4,5-trimethoxybenzoate (TMB-8)の効果を検討する目的で,イヌに左室全冠動脈血流量の減少とペーシング頻度の増加による左室global ischemiaを作成した.このモデルにおいては,左室弛緩能の一指標であるTの増加と左室拡張終期圧(LVEDP)の上昇が発現し,虚血による左心室弛緩障害がみとあられた.これに対し,TMB-8の30,100μg/minの冠動脈内持続投与はTとLVEDPの増加を用量依存性に抑制した.一方,冠血流量はTMB-8によって影響をうけなかった.以上のことから,TMB-8は虚血に伴う左心室弛緩障害を改善することが明らかになった.冠血流量がTMB-8により影響を受けなかったことから,TMB-8の作用は血流改善を介したものでなく,虚血心筋細胞内のCa過剰の抑制作用を介したものと考えられた.
  • 木村 隆仁, 村上 弘子, 酒井 永, 脇 功巳
    1988 年 91 巻 3 号 p. 151-161
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    中枢性鎮痛薬eptazocineの呼吸,循環器系に対する影響を麻酔犬を用いて検討し,pentazocineおよびbutorphano1の作用と比較した.犬の全身血行動態に対しeptazocine 1mg/kg,i.v.は心拍数,LVdP/dtおよび心拍出量を増加したが,血圧,左心室拡張終期圧,右心房圧,肺動脈圧および肺動脈楔入圧にはほとんど影響を及ぼさなかった.eptazocine 3mg/kg,i.v.では血圧,LVdP/dt,心拍出量および左心室拡張終期圧の減少が認められ,心拍数および肺循環系には大きな変化は認められなかった.pentazocineでは1mg/kgおよび3mg/kg,i.v.で血圧,LVdP/dtおよび心拍出量の増加が認められたが心拍数には大きな変化はみられなかった.またpentazocineでは肺動脈圧の上昇が認められた.butorphano1では0.1mg/kgおよび0.3mg/kg,i.v.で血圧,心拍数およびLVdP/dtの減少が認められたが他のパラメーターには大きな変化は認められなかった.犬の呼吸機能に対してはeptazocineおよびpentazocineの1mg/kgおよび3mg/kg,i.v.で用量依存的な呼吸抑制作用が認められ,それに伴い血液のPO2およびpHの減少とPCO2の増加がみられたがその作用持続は短く,呼吸抑制作用はpentazocineで強く認められた.またbutorphanol 0.lmg/kgおよび0.3mg/kg,i.v.ではほとんど呼吸抑制作用は認められなかった.以上の結果からeptazocineの全身血行動態に対する作用はpentazocineおよびbutorphanolの作用とは異なり,呼吸に対しては弱い呼吸抑制作用を有することが示された.
  • 秦 多恵子, 喜多 富太郎, 西村 芳卓
    1988 年 91 巻 3 号 p. 163-171
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    正常ラットの皮質脳波(以下脳波)ならびに,自律神経失調症の1モデル動物であるSARTストレスラットの異常脳波,すなわち覚醒時におけるより一層の低振幅速波化ならびに徐波睡眠時における一層の高振幅徐波化に及ぼすNeurotropinおよびその他の薬物の作用をパワースペクトル分析法を用いて調べた.脳波の測定は薬物の1回投与60分後に,または6回連日投与して最終投与の翌日に行った.SARTストレス動物の諸症状に対する有効性が認められている鎮痛鎮静薬Neurotropinは,1回投与では無効であったが,ストレス負荷期間中の連日投与によりストレスによる覚醒時脳波変化に対して阻止効果を示した.マイナートランキライザーのalprazolamおよび脳機能代謝調整剤であるGABOBの連日投与も覚醒時の脳波変化に対して同様阻止効果を示した.また睡眠時脳波変化に対しては3薬物共にストレスによるトータルパワーの増加のみ抑制した.一方,正常ラットにおいては,Neurotropinは覚醒時脳波を一過性に僅かに速波化し,また徐波睡眠時脳波の高振幅徐波化を助長した.またalpra201amは覚醒時脳波を一過性に著しく高振幅速波化し,GABOBは徐波睡眠時脳波を低振幅速波化するのが認められた.以上のように,Neurotropinは覚醒・睡眠時共に非ストレスラットの脳波に対するのとは逆方向に作用することによりSARTストレスによる脳波変化を改善した.Neurotropinのこの緩解効果は,非ストレスラットの脳波に対するのと同方向の作用によりストレス脳波改善作用を示したalprazolamやGABOBとは恐らく異なった作用機序によっている可能性が推察された.
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