日本薬理学雑誌
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副腎髄質摘除ラットにおける[D-Ala2,Met5]-エンケファリンのl-アドレナリン昇圧作用増強効果の変化
泉 正明
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1988 年 91 巻 5 号 p. 301-308

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抄録
副腎髄質のアドレナリン貯蔵顆粒中に存在するエンケファリンのアドレナリン作働薬血圧上昇作用に対する影響につき副腎髄質摘除(AdMx)ラットを用いて検索した.一部の実験においては12週齢に副腎摘除雌雄ラットを用いた.血圧はtail-cuff法により測定した.1)対照群雌雄および3週齢でAdMxした群(3WAdMx)の雄は[D-Ala2,Met5]-エンケファリン(以下エンケファリン)100μ91kg単独皮下投与後明らかな昇圧を示した.これに対し3WAdMx群雌における昇圧はわずかであった.2)対照群雌雄においてはエンケファリン(100μg/kg 皮下)5分前処置はl-アドレナリン(50μg/kg 皮下)の昇圧反応を増強した.これに対し,3WAdMx群雌雄においてはエンケファリン前処置によりアドレナリンの昇圧作用がほぼ完全に遮断された.3)ナロキソン(2.5mg/kg 皮下)5分前投与を行うと,対照群雌雄,3WAdMx群雄においてエンケファリン+アドレナリンの昇圧が減弱あるいは完全に消失した.これに対し,AdMx群雌ではナロキソン前投与によりエンケファリン+アドレナリンの昇圧作用が出現した.4)12週齢AdMx群雌ではエンケファリン+アドレナリンにより昇圧が認められたが,その程度は対照群より小であり,ナロキソン前投与で,この昇圧はむしろ増大した.5)エンケファリン+アドレナリン投与後の心拍数の変化に対照群と3WAdMx群間,雌雄間の有意な差を認めなかった.幼若期から副腎髄質由来のカテコラミンおよびエンケファリンの欠損は血圧反応に関与するアドレナリンレセプターに対する外因性エンケファリンの修飾機構を変化させる可能性が示唆された.
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