日本薬理学雑誌
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91 巻, 5 号
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  • 別所 秀樹, 原 祐司, 木村 康子, 成松 明博, 堀井 大治郎, 戸部 昭広
    1988 年 91 巻 5 号 p. 275-283
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    terazosinの臨床における起立性低血圧発現を予測する目的で,無麻酔ウサギおよび高血圧自然発症ラット(SHR)tiltingモデルを用い起立性反射に対する抑制作用をprazosinと比較検討した.ウサギにおいて,平均血圧を15mmHg下降させるのに要した用量比(prazosin/terazosin)は0.3であった.一方,起立性反射を30mmHg減少させるのに要した用量比は0.13であった.SHRにおいて,prazosin 1mg/kg,p.o.,hexamethonium 20mg/kg,i.p.,hydralazine 3mg/kg,p.o.,nicardipine 3mg/kg,p.o.は,ほぼ同程度の降圧を生じさせた(最大30mmHg).このときprazosinとhexamethoniumは起立性反射を強く抑制したが,hydralazineとnicardipineは抑制を示さなかった.この成績は,これら4種の抗高血圧薬の臨床における起立性低血圧発現態度と一致していた.このSHR tiltingモデルにおいても平均血圧を15%低下させたとき,prazosinが起立性反射を明らかに抑制したにもかかわらず,terazosinは抑制を示さなかった.降圧作用と起立性反射抑制作用の用量比から,起立性低血圧の起りやすさを計算すると,terazosinはprazosinの約1/3であった.以上の実験結果より,臨床においてもterazosinはprazosinに比べ起立性低血圧を生じる可能性が少ないことが予測される.
  • 宮本 要, 菱沼 宇春, 永川 純一, 永岡 尚子, 山中 鼎司, 若林 庸夫
    1988 年 91 巻 5 号 p. 285-293
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    新規合成protease inhibitorである4-(2-succinimidoethylthio)phenyl 4-guanidinobenzoate methanesulfonate (E-3123)のin vitro各種酵素阻害活性およびin vivo実験的急性膵炎に対する効果を検討した.E-3123のin vitroにおける酵素阻害活性は,trypsinに対して最も強く認められ(IC50:3.9×10-8M),以下Plasmin(9.5×10-7M),thrombin(1.9×10-6M)の順であった.ラットのtrypsin膵炎モデルにおいて,E-3123は0.03~0.3mg/kgで用量に依存した生存率の改善効果を示した.ウサギのtrypsin膵炎モデルでは,E-3123は0.3~3.0mg/kgで用量に依存した生存率の改善効果を示すとともに,血中のtrypsin様活性およびlipase活性に対しても上昇抑制作用を示した.ウサギ膵の病理組織学的検討において,対照群でみられる出血性膵細胞壊死を伴う急性膵炎像はE-3123(3.0mg/kg)の投与により著しく軽減された.またイヌのclosed duodenal loop膵炎モデルにおいても,E-3123は1.0および3.0mg/kgで用量に依存した血中逸脱酵素の抑制が認められた.以上,E-3123は膵炎発症,進展のkey enzymeと考えられるtrypsinを強く抑制し,かつ実験的膵炎モデルにおいても明らかに改善効果が認められたことから,急性膵炎治療剤としての可能性が示唆された.
  • 寿野 正廣, 永岡 明伸
    1988 年 91 巻 5 号 p. 295-299
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    脳ホモジネートを用いてidebenoneならびに各種脳機能改善剤の過酸化脂質(LPO)生成に及ぼす影響について検討した.idebenoneは,ラット脳ホモジネートにおけるLPOの生成を濃度依存的に抑制した.IC50は38μMであった.このidebenoneのLPO生成抑制作用は,ミトコンドリア呼吸系の基質,succinateの添加によって著明に(約100倍)増強された.succinateの至適濃度は0.5mMであった.succinate存在下および非存在下における各種脳機能改善剤のLPO生成に及ぼす影響を調べたところ,succinate非存在下,薬物濃度100μMでは,idebenone>vinpocetine>bifemelane>indeloxazine>calcium hopantenateの順でLPO生成抑制作用が認められた.一方,succinate存在下では(薬物濃度,1μM),idebenoneにのみ作用が認められ,他の薬剤にはほとんど作用は認められなかった.以上の結果から,idebenoneは脳ホモジネートにおいて,succinateにより活性化を受け,LPO生成抑制作用を発現することが示唆された.また,他の薬剤は,多くはそれ自身でLPO生成抑制作用を有するものの,succinateによる活性化は受けないものと推察された.
  • 泉 正明
    1988 年 91 巻 5 号 p. 301-308
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    副腎髄質のアドレナリン貯蔵顆粒中に存在するエンケファリンのアドレナリン作働薬血圧上昇作用に対する影響につき副腎髄質摘除(AdMx)ラットを用いて検索した.一部の実験においては12週齢に副腎摘除雌雄ラットを用いた.血圧はtail-cuff法により測定した.1)対照群雌雄および3週齢でAdMxした群(3WAdMx)の雄は[D-Ala2,Met5]-エンケファリン(以下エンケファリン)100μ91kg単独皮下投与後明らかな昇圧を示した.これに対し3WAdMx群雌における昇圧はわずかであった.2)対照群雌雄においてはエンケファリン(100μg/kg 皮下)5分前処置はl-アドレナリン(50μg/kg 皮下)の昇圧反応を増強した.これに対し,3WAdMx群雌雄においてはエンケファリン前処置によりアドレナリンの昇圧作用がほぼ完全に遮断された.3)ナロキソン(2.5mg/kg 皮下)5分前投与を行うと,対照群雌雄,3WAdMx群雄においてエンケファリン+アドレナリンの昇圧が減弱あるいは完全に消失した.これに対し,AdMx群雌ではナロキソン前投与によりエンケファリン+アドレナリンの昇圧作用が出現した.4)12週齢AdMx群雌ではエンケファリン+アドレナリンにより昇圧が認められたが,その程度は対照群より小であり,ナロキソン前投与で,この昇圧はむしろ増大した.5)エンケファリン+アドレナリン投与後の心拍数の変化に対照群と3WAdMx群間,雌雄間の有意な差を認めなかった.幼若期から副腎髄質由来のカテコラミンおよびエンケファリンの欠損は血圧反応に関与するアドレナリンレセプターに対する外因性エンケファリンの修飾機構を変化させる可能性が示唆された.
  • 高瀬 英樹, 今西 勝江, 三浦 治, 弓岡 栄三郎, 渡辺 裕司
    1988 年 91 巻 5 号 p. 309-317
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    黄連解毒湯,三黄瀉心湯,安中散ならびに大柴胡湯のhistamine,pentagastrin,carbacholおよび2-deoxy-D-glucose(2-DG)刺激酸分泌に対する作用をラット胃内灌流法を用いて検討し,cimetidine,16,16-dimethyl-prostaglandin E2 (DMPGE2)およびatropineの作用と比較した.1)黄連解毒湯は100mg/kgでhistamineおよびcarbachol刺激酸分泌に対して影響をおよぼさず,pentagastrin刺激酸分泌を若干抑制し,2-DG刺激酸分泌を著明に抑制した.2)三黄瀉心湯100mg/kgはhistamineおよびcarbachol刺激酸分泌に対して作用を示さず,pentagastrinおよび2-DG刺激酸分泌を著明に抑制した.3)安中散および大柴胡湯はいずれも100mg/kgでcarbachol刺激酸分泌に影響を与えず,histamineおよびpentagastrin刺激酸分泌を軽度に抑制し,2-DG刺激酸分泌を著明に抑制した.4)cimetidineは1~10mg/kgでhistamine,pentagastrin,carbacholならびに2-DG刺激酸分泌をいずれも用量依存的に有意に抑制した.DMPGE2も10μg/kgでいずれの酸分泌刺激に対しても強力な抑制作用を示した.5)atropineは50μg/kgでhistamineおよびpentagastrin刺激酸分泌に対して作用せず,carbacholおよび2-DG刺激酸分泌を有意に抑制した.以上の結果から,黄連解毒湯,三黄瀉心湯,安中散および大柴胡湯はいずれも胃酸分泌調節機構に作用することが明らかとなり,それらの作用機序はcimetidine,DMPGE2およびatropineのそれとは異なることが示唆された.
  • 高瀬 英樹, 今西 勝江, 三浦 治, 弓岡 栄三郎, 渡辺 裕司
    1988 年 91 巻 5 号 p. 319-324
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    黄連解毒湯,三黄瀉心湯,安中散ならびに大柴胡湯のethanolおよびaspirinによって惹起されるラット胃粘膜損傷に対する作用を検討し,sucralfate,cimetidineおよび16,16-dimethl-prostaglandin E2(DMPGE2)の作用と比較した.1)黄連解毒湯は,25~250mg/kg,p.o.で,ethanolあるいはaspirinによる胃粘膜損傷を有意に抑制した.sucralfateは100mg/kg,p.o.で抑制傾向を,500mg/kg,p.o.でethanolおよびaspirin胃損傷を有意に抑制した.DMPGE2は0.1~5.0μg/kg,p.o.でそれぞれの胃損傷を有意に抑制した.2)三黄瀉心湯は,50mg/kg,p.o.以上でaspirin胃粘膜損傷を,250および500mg/kg,p.o.でethanol胃損傷を有意に抑制した,3)安中散ならびに大柴胡湯は,250mg/kg,p.o.以上でaspirin胃損傷を抑制し,500mg/kg,p.o.でethanol胃損傷の形成も抑制した.4)cimetidineは10~250mg/kg,p.o.でaspirin胃損傷を用量依存的に抑制した.ethanol胃粘膜損傷に対しては,10mg/kg,p.o.で抑制しなかったが,100および250mg/kg,p.o.で有意に抑制した.以上のように,黄連解毒湯,三黄瀉心湯,安中散および大柴胡湯はいずれも,胃粘膜損傷抑制作用を示し,潰瘍形成に対する予防または治療に有用な薬剤であることが示唆された.
  • 久世 哲郎, 宮崎 秀人, 種池 哲朗
    1988 年 91 巻 5 号 p. 325-334
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    theophylline(TP)のイヌにおける体内動態の基礎的資料を得る目的で同一の麻酔犬を使用して,TPを非経口的あるいは経口的に投与した後,その血中濃度推移,尿中排泄物ならびに血清蛋白結合率を調べた.静脈内注射後のTP(8.2mg/kg,n=10)のファーマコキネティックスは,two-compartment open modelで解析することが出来た.TPのβ相における血漿中濃度の半減期(T1/2β)は,5.63±0.83時間,見かけの分布容積(vd)は,0.73±0.04l/kgであった.消失速度定数は,0.37±0.05時間-1であった.TPに由来する2種類の代謝物質が尿中から抽出され,高速液体クロマトグラフィーによって,3-メチルキサンチンと1,3-ジメチル尿酸と同定された.イヌに投与したTP投与量の約85%(n=4)が,24時間以内に尿中に排泄された.その大部分(2/3)が,TPの代謝物であり,3-メチルキサンチンとして,40.2±3.5%,1,3-ジメチル尿酸として,26.2±4.3%が排泄された.一方,TP未変化体の排泄率は,18.2±2.4%であった.筋肉内注射されたTP(8.2mg/kg,n=5)の吸収は非常に良く,そのバイオアベイラピリティーは,101.9±6.5%であった.しかし,経口投与された場合には,バイオアベイラビリティーは低かった(72.8±11.8%,n=5).TPの血清中蛋白結合率は,約44%(n=3~7)であり,この値はTPの血清中濃度(8.2~24.6μg/ml)には依存していなかった.
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