日本薬理学雑誌
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数種漢方処方の胃機能に対する薬理学的研究(第2報)数種胃酸分泌刺激薬に対する黄連解毒湯,三黄瀉心湯,安中散および大柴胡湯の作用
高瀬 英樹今西 勝江三浦 治弓岡 栄三郎渡辺 裕司
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1988 年 91 巻 5 号 p. 309-317

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抄録
黄連解毒湯,三黄瀉心湯,安中散ならびに大柴胡湯のhistamine,pentagastrin,carbacholおよび2-deoxy-D-glucose(2-DG)刺激酸分泌に対する作用をラット胃内灌流法を用いて検討し,cimetidine,16,16-dimethyl-prostaglandin E2 (DMPGE2)およびatropineの作用と比較した.1)黄連解毒湯は100mg/kgでhistamineおよびcarbachol刺激酸分泌に対して影響をおよぼさず,pentagastrin刺激酸分泌を若干抑制し,2-DG刺激酸分泌を著明に抑制した.2)三黄瀉心湯100mg/kgはhistamineおよびcarbachol刺激酸分泌に対して作用を示さず,pentagastrinおよび2-DG刺激酸分泌を著明に抑制した.3)安中散および大柴胡湯はいずれも100mg/kgでcarbachol刺激酸分泌に影響を与えず,histamineおよびpentagastrin刺激酸分泌を軽度に抑制し,2-DG刺激酸分泌を著明に抑制した.4)cimetidineは1~10mg/kgでhistamine,pentagastrin,carbacholならびに2-DG刺激酸分泌をいずれも用量依存的に有意に抑制した.DMPGE2も10μg/kgでいずれの酸分泌刺激に対しても強力な抑制作用を示した.5)atropineは50μg/kgでhistamineおよびpentagastrin刺激酸分泌に対して作用せず,carbacholおよび2-DG刺激酸分泌を有意に抑制した.以上の結果から,黄連解毒湯,三黄瀉心湯,安中散および大柴胡湯はいずれも胃酸分泌調節機構に作用することが明らかとなり,それらの作用機序はcimetidine,DMPGE2およびatropineのそれとは異なることが示唆された.
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