日本薬理学雑誌
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非ステロイド性抗炎症薬AD-1590のアレルギー性炎症に対する影響
中村 秀雄元吉 悟石井 勝美門河 敏明
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1988 年 92 巻 1 号 p. 29-38

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抄録

AD-1590のアレルギー性炎症に対する抑制効果を検討した.AD-1590は,indomethacinとともに32mg/kgの大量経口投与でも1型アレルギーであるラット受身皮膚アナフィラキシー(PCA)に対して明確な抑制効果を示さなかったが,prednisoloneおよびcyproheptadineは強い抑制効果を示した.III型およびIV型アレルギーが関与すると考えられるラットadjuvant関節炎に対して,AD-1590は,2および4mg/kg/dayを1日1回adjuvant注射直前から3週間の連続経口投与により明確な予防効果を,また,0.2~1mg/kg/dayをadjuvant注射2週間後から1週間の連続経口投与で明確な治療効果を発現した.この予防効力および治療効力は,indomcthacinのそれぞれ約1/4および約1/5であった.prednisolone(1mg/kg/day,p.o.)およびcyproheptadine(40mg/kg/day,p.o.)も強いadjuvant関節炎抑制効果を示した.一方,IV型アレルギーであるマウスoxazolone誘発接触皮膚炎(耳介浮腫)に対して,prednisoloneは塗布適用で強力な抑制効果(ED50=0.0119mg/ear)を発現したが,cyproheptadineの抑制効果は弱く,その抑制は部分的であった.試験した酸性非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の多くは2mg/earの塗布適用でも50%前後迄の部分的抑制に止まったが,AD-1590(ED50=0.318mg/ear)およびindomethacin(ED50=0.699mg/ear)は比較的強い抑制効果を示し,特に,AD-1590は,他のNSAIDとは相違して,用量-反応関係が明確で,かつ,高用量でほぼ完全に耳介浮腫を抑制した.経口投与でのAD-1590の耳介浮腫抑制効力(ED50=1.75mg/kg×2)はindomethacinおよびibuprofenのそれぞれ約2倍および100倍であった.以上の結果から,アレルギー性炎症に対するAD-1590の薬理学的特性はprednisoloneおよびcyproheptadineとは相違するとともに試験した他のNSAIDとも部分的に相違することが示唆された.

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