日本薬理学雑誌
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92 巻, 1 号
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  • 仲澤 幹雄, 今井 昭一
    1988 年 92 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    The principles of nuclear magnetic resonance (NMR) spectroscopy were explained and its application to biomedical research discussed. With 31P-NMR, it is feasible to conduct a continuous, non-invasive measurement of the contents of myocardial high-energy phosphate compounds and the intracellular pH (determined by monitoring the pH dependent shift of the inorganic phosphate peak relative to that of creatine phosphate), and to correlate them with the mechanical function. The determination of the free magnesium concentration is also possible on a similar principle to that for pH determination (the shift of MgATP peaks relative to ATP is utilized in this case). It is estimated to be 0.3 mM and was found not to be changed during ischemia. Several examples of studies including our own conducted to delineate the ischemic derangements of the myocardial energy metabolism and the effects of various interventions thereupon were illustrated. Finally a brief mention was made of the saturation transfer technique. This is the only method with which one can study the kinetics of the enzyme reactions under in vivo conditions. The application of the method for analysis of the creatine kinase reaction and the ATP synthesis was demonstrated.
  • 寺澤 道夫, 友松 貴子, 丸山 裕
    1988 年 92 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    traxanox sodium pentahydrate(traxanox)の実験的アレルギー性鼻炎に対する作用を検討した.traxanox(10および30mg/kg,p.o.)は,dinitrophenyl-coupled ascaris抗原で能動的に感作したラットにおいて,抗原の鼻腔灌流による色素の漏出を用量に依存して抑制し,その活性は,tranilastの約4倍であった.また,traxanox(30mg/kg,p.o.)を7日間連続投与しても,その作用は減弱しなかった.disodium cromoglycate(DSCG)も,3および10mg/kg,i.v.で本反応を抑制した.また,egg albuminで能動的に感作したモルモットでの,抗原の鼻腔灌流による鼻腔抵抗の上昇に対して,traxanox(1~10mg/kg,i.v.)は,用量に依存して抑制した.一方,本反応に対して,tranilast(10mg/kg,i.v.),DSCG(100mg/kg,i.v.)およびmepyramine(1mg/kg,i.v.)は無効であった.これらの結果から,traxanoxはヒトのアレルギー性鼻炎,特に,鼻閉に対して有効である可能性が示唆された.
  • 後藤 幸子, 宮崎 匡輔, 女屋 純一, 坂本 崇, 徳安 清親, 並木 脩
    1988 年 92 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    ラットの膝関節腔内に種々の内因性発痛物質を投与することにより,関節疼痛モデルを作製し,Na-hyaluronate(SPH)の疼痛抑制作用について検討した.種々の発痛物質のうち,bradykinin(BK)とserotoninとでは投与量に依存した関節疼痛反応が明らかに認められたが,histamine,substance-P,acetylcholineでは顕著な疼痛反応は認められなかった.また,一般に病態関節では関節組織中のprosta-glandin量の増加や関節液中のhyaluronic acid(HA)の濃度及び分子量が低下していることが知られている.そこでBKによる疼痛モデルに対し,prostaglandin E2の添加あるいはhyaluronidase処理による関節液中のHAの低分子化が,疼痛反応に対してどのように影響を及ぼすかについて検討した.これらの処理によりBKの疼痛閾値は著しく低下し,病態関節では正常関節に比べより痛みを感じやすい状態にあることが示唆された.SPHはこれらのBKによる疼痛反応を明らかに抑制し,その抑制効果は,前処理時のSPHの投与量に応じて長時間持続することが認められた.また,その抑制効果の程度はSPHの滑膜組織における分布量と相関していた.またhyaluronidase処理関節にSPHを投与しても疼痛が抑制されたことから,関節液中のHA濃度を上昇させることによって,関節液の粘度を高めることができれば,HAの分子量は正常化しなくても疼痛を緩和させ得ることが示唆された.一方,同じ多糖体であり,SPHと同程度の粘度を示すmethylcelluloseや,polyanionicなムコ多糖体多硫酸エステル及びHAのオリゴ糖では鎮痛効果は認あられなかった,このことから効果の発現には高分子量HA特有の立体分子構造が大きく関与していることが考えられ,SPHが滑膜などの組織の痛覚受容体を被覆し,また内因性の発痛物質を捕捉することにより疼痛抑制作用を発現するものと考えられた.
  • 中村 秀雄, 元吉 悟, 石井 勝美, 門河 敏明
    1988 年 92 巻 1 号 p. 29-38
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    AD-1590のアレルギー性炎症に対する抑制効果を検討した.AD-1590は,indomethacinとともに32mg/kgの大量経口投与でも1型アレルギーであるラット受身皮膚アナフィラキシー(PCA)に対して明確な抑制効果を示さなかったが,prednisoloneおよびcyproheptadineは強い抑制効果を示した.III型およびIV型アレルギーが関与すると考えられるラットadjuvant関節炎に対して,AD-1590は,2および4mg/kg/dayを1日1回adjuvant注射直前から3週間の連続経口投与により明確な予防効果を,また,0.2~1mg/kg/dayをadjuvant注射2週間後から1週間の連続経口投与で明確な治療効果を発現した.この予防効力および治療効力は,indomcthacinのそれぞれ約1/4および約1/5であった.prednisolone(1mg/kg/day,p.o.)およびcyproheptadine(40mg/kg/day,p.o.)も強いadjuvant関節炎抑制効果を示した.一方,IV型アレルギーであるマウスoxazolone誘発接触皮膚炎(耳介浮腫)に対して,prednisoloneは塗布適用で強力な抑制効果(ED50=0.0119mg/ear)を発現したが,cyproheptadineの抑制効果は弱く,その抑制は部分的であった.試験した酸性非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の多くは2mg/earの塗布適用でも50%前後迄の部分的抑制に止まったが,AD-1590(ED50=0.318mg/ear)およびindomethacin(ED50=0.699mg/ear)は比較的強い抑制効果を示し,特に,AD-1590は,他のNSAIDとは相違して,用量-反応関係が明確で,かつ,高用量でほぼ完全に耳介浮腫を抑制した.経口投与でのAD-1590の耳介浮腫抑制効力(ED50=1.75mg/kg×2)はindomethacinおよびibuprofenのそれぞれ約2倍および100倍であった.以上の結果から,アレルギー性炎症に対するAD-1590の薬理学的特性はprednisoloneおよびcyproheptadineとは相違するとともに試験した他のNSAIDとも部分的に相違することが示唆された.
  • 芳賀 慶一郎, 浅野 潔, 大菅 邦男, 丸山 裕
    1988 年 92 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    H+,K+-ATPase阻害薬であるomeprazole(OPZ)の胃酸分泌および胃・十二指腸損傷に及ぼす影響を,H2-receptor拮抗薬であるfamotidine(FMD)と比較検討した,OPZは幽門結紮ラット胃酸分泌を3~30mg/kg十二指腸内投与(i.d.)で用量依存的に抑制し,その活性はFMDに比べて強かった.同時にOPZは用量依存的にK+分泌を増加させ,高用量ではpepsinおよびNa+分泌を抑制した.OPZおよびFMDのいずれもhexosamine分泌には影響しなかった.Heidenhain pouch犬において,OPZおよびFMDの0.1あるいは0.3mg/kgを単回静脈内投与すると,両者はほぼ同様にhistamine誘発胃酸分泌を抑制した.同様の実験でOPZは,0.3mg/kgの1日1回,7日間胃内投与によって数日間投与まで胃酸分泌抑制作用を増強し,投与後22時間目にも約50%の抑制作用を示した.それ以降の投与では抑制作用をさらに増強することはなく,ほぼ定常状態を示した.繰返し投与後の胃酸分泌抑制作用はOPZがFMDに比べて強く,持続的であった.幽門結紮潰瘍の発生に対して,OPZは10および30mg/kg,i.d.で抑制作用を示し,その活性はFMDに比べて強かった,酢酸胃・十二指腸潰瘍において,OPZは10および100mg/kg/dayの2週間経口投与(p.o.)で治癒促進作用あるいはその傾向を示したが,FMDは同用量で促進作用を示さなかった.水浸拘束ストレス胃糜爛発生に対して,OPZは3~30mg/kg,p.o.で抑制作用を示し,その活性はFMDに比べて強かった.これらの抗潰瘍作用の機序には,胃酸分泌抑制作用の関与が考えられる.OPZはFMDと異なり30mg/kg,p.o.でethanol胃糜爛発生を抑制することから,胃粘膜防禦能の増強作用の関与も推察される.以上のように,胃酸分泌を最終段階で抑制するOPZは,受容体拮抗薬であるFMDに比較して,勝る胃酸分泌抑制および抗潰瘍作用を示すことが明らかとなり,消化性潰瘍等に対する,新しい,かつ優れた治療効果が期待される.
  • 喜多川 久人, 竹田 富美代, 林 利浩, 泉田 雅代, 公平 宏
    1988 年 92 巻 1 号 p. 49-60
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    抗コリン作用を有する気管支拡張薬,oxitropium bromide(Ba 253)の呼吸器,循環器,生殖器および泌尿器系に対する作用をipratropium bromide(Sch 1000)およびatropine sulfateと比較した.Ba 253は麻酔ネコにおいて低用量(0.1~0.3mg/kg,i.v.)で心拍数の増加を,高用量(3mg/kg,i.v.)で犬およびネコにおいて血圧下降を示したが,高濃度(1,10%)のエアロゾル吸入でも麻酔犬,覚醒ウサギの心拍数に影響を及ぼさなかった.Ba 253は高濃度でモルモット摘出心房におけるisoproterenolの陽性変力作用および摘出ウサギ血管における弛緩作用を増強した.Ba 253はSch 1000およびatropineと同様に,皮下投下によりマウスの小腸輸送能を抑制したが,経口投与では作用しなかった.Ba 253およびSch 1000は,高用量(1~30mg/kg,i.v.)の投与により,ラット生体位子宮運動を亢進させたが,エアロゾルの吸入ではこの様な作用を示さなかった,一方,Ba 253は,ウサギ摘出胸部大動脈の収縮反応,ウサギ摘出回腸の自動運動,およびラット胆汁分泌,尿排泄,膀胱運動などに対しては何ら作用しなかった.以上のように,Ba 253は静脈内あるいは皮下投与により,Sch 1000と同様に血圧下降作用,心拍数増加作用,小腸輸送能抑制作用,また子宮運動亢進作用を示したが,高濃度のエアロゾル吸入あるいは経口投与では,循環器系および子宮運動に対する作用は認められなかった.
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