日本薬理学雑誌
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血管作動薬および下歯槽神経電気刺激のイヌ歯髄血流量におよぼす影響
塗々木 和男
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1988 年 92 巻 2 号 p. 61-67

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抄録

歯髄における循環調節の詳細は,方法論上の遅れから明確に説明されていない.本研究では,レーザードップラー血流量測定法を応用し,血管作動物質の歯髄局所適用および下歯槽神経電気刺激によって得られる歯髄血流量変化を指標として,歯髄循環反応性を検討した.acetylcholine,isoprotereno1,histamine,およびsubstance Pの歯髄局所適用は,イヌ歯髄血流量を用量依存性に増加させ,この増加は,atropine,propranolol,diphenhydramine,および〔D-Pro2,D-Trp7,9〕-substance Pでそれぞれ抑制された.bradykininは歯髄血流量を用量依存性に増加させるものの,この効果は,des-Arg9-〔Leu8〕-bradykininでは抑制されず,indomethacinで抑制されるものであった.また,prostaglandin E2は,歯髄血流量を用量依存性に増加させた.norepinephrineは歯髄血流量を用量依存性に減少させ,この減少はphentolamineで抑制された.一方,下歯槽神経電気刺激による歯髄血流量の増加は,indomethacinで抑制されたが,atropine,propranolol,dlphenhydramine,soybean trypsin inhibitor,aprotinin,des-Arg9-〔Leu8〕-bradykinin,あるいは〔D-Pro2,D-Trp7,9〕-substance Pには影響されなかった.以上の結果から,bradykininの効果は,prostaglandins遊離にもとづくものであり,そして,実験に用いた血管作動物質が歯髄にそれぞれ存在すれば,歯髄循環系は十分これに反応することが確認された.また,bradykininの効果はB2-kinin受容体を介して生ずる可能性が示唆された.一方,下歯槽神経電気刺激で生ずる歯髄血流量増加は,自律神経系を介した血管拡張機構によるものではなく,逆行性刺激に応答した知覚神経を介する血管拡張によるものであり,主としてprostaglandinsの遊離に依存した反応であると考えられる.したがって,歯髄自体に,この機構に関連した局所調節が存在する可能性がある.

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