日本薬理学雑誌
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92 巻, 2 号
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  • 塗々木 和男
    1988 年 92 巻 2 号 p. 61-67
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    歯髄における循環調節の詳細は,方法論上の遅れから明確に説明されていない.本研究では,レーザードップラー血流量測定法を応用し,血管作動物質の歯髄局所適用および下歯槽神経電気刺激によって得られる歯髄血流量変化を指標として,歯髄循環反応性を検討した.acetylcholine,isoprotereno1,histamine,およびsubstance Pの歯髄局所適用は,イヌ歯髄血流量を用量依存性に増加させ,この増加は,atropine,propranolol,diphenhydramine,および〔D-Pro2,D-Trp7,9〕-substance Pでそれぞれ抑制された.bradykininは歯髄血流量を用量依存性に増加させるものの,この効果は,des-Arg9-〔Leu8〕-bradykininでは抑制されず,indomethacinで抑制されるものであった.また,prostaglandin E2は,歯髄血流量を用量依存性に増加させた.norepinephrineは歯髄血流量を用量依存性に減少させ,この減少はphentolamineで抑制された.一方,下歯槽神経電気刺激による歯髄血流量の増加は,indomethacinで抑制されたが,atropine,propranolol,dlphenhydramine,soybean trypsin inhibitor,aprotinin,des-Arg9-〔Leu8〕-bradykinin,あるいは〔D-Pro2,D-Trp7,9〕-substance Pには影響されなかった.以上の結果から,bradykininの効果は,prostaglandins遊離にもとづくものであり,そして,実験に用いた血管作動物質が歯髄にそれぞれ存在すれば,歯髄循環系は十分これに反応することが確認された.また,bradykininの効果はB2-kinin受容体を介して生ずる可能性が示唆された.一方,下歯槽神経電気刺激で生ずる歯髄血流量増加は,自律神経系を介した血管拡張機構によるものではなく,逆行性刺激に応答した知覚神経を介する血管拡張によるものであり,主としてprostaglandinsの遊離に依存した反応であると考えられる.したがって,歯髄自体に,この機構に関連した局所調節が存在する可能性がある.
  • 関戸 祥三郎, 細野 仁一, 平塚 幸蔵, 荒木 勉, 岩崎 守男
    1988 年 92 巻 2 号 p. 69-96
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    nitrosourea系制癌剤MCNUの薬理作用について主に静脈内投与により検討を行った.MCNUはマウスの行動,ウサギの脳波,ネコの脊髄反射,ウサギの体温およびマウスの協調運動に影響を及ぼさず,また,マウスにおいて麻酔増強,抗痙攣および鎮痛作用を示さなかった.MCNUはイヌの呼吸,血圧,心拍数,心電図およびラットの摘出心房の収縮に影響を与えなかったが,100μg以上でウサギの摘出耳介血管を拡張させた.MCNUはモルモットにおいて局所麻酔作用を示さず,ラットの横隔膜-横隔神経筋標本の収縮に影響を及ぼさなかった.MCNUはモルモットおよびウサギの回腸,ラットの輸精管,子宮の収縮にほとんど影響を与えず,マウスの消化管輸送能,瞳孔径およびネコの瞬膜の収縮に影響を示さなかった.ラットの胃液分泌に対し25mg/kgで弱い抑制作用を示した.MCNUは12.5mg/kg以上でマウスの白血球数を減少させた,この減少は投与2週間後にはほぼ回復した.MCNUは25mg/kgでマウスの体液性免疫能,細胞性免疫能を抑制した.網内系機能には影響を及ぼさなかった.MCNUはウサギにおいて0.1%以上の溶液を点眼,あるいは0.5%以上の溶液を皮下または皮内投与すると局所刺激作用を示した.ラットの胃腸管に対する障害はごく軽度であった.MCNUはラットの血糖,腎機能,肝機能に影響を及ぼさず,抗炎症,利尿作用およびイヌにおける溶血作用を示さなかった.MCNUは50mg/kgでラットの血液凝固能を抑制し,イヌにおいて4mg/kg以上で嘔吐,5mg/kg以上で下痢を発現した.以上のように,MCNUの主な薬理作用は白血球減少,局所刺激,および免疫抑制であった.白血球減少作用はchlorozotocinよりも強いが,CCNUよりも弱く,その他の作用はこれらの薬剤よりもやや弱いが,あるいは同程度の強さであると考えられた.
  • 中道 博之, 村上 松太郎, 佐々木 広, 水沢 重則, 近藤 靖, 渡辺 勝宏, 高橋 晶, 工藤 康嗣, 小野 幸彦
    1988 年 92 巻 2 号 p. 97-104
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    正常血圧ラットを用い,麻酔下でguanfacineによる降圧および心拍数減少時における脳内cyclic nucleotides量の変化を検討した.さらに,α遮断薬の前処置により,この脳内cyclic nucleotides量変化に対するα受容体の関与についても検討を加えた,guanfacineの静脈内投与により血圧降下と心拍数減少が認められた.guanfacineの降圧および徐脈効果は,α2遮断薬であるyohimbineにより抑制されたが,α1遮断薬であるprazosinでは有意な影響を受けなかった.guanfacineにより,cyclic AMPは視床下部で減少したが,yohimbineはこの作用を抑制した.また,小脳,橋延髄,視床下部において,cyclic GMPも減少したが,yohimbineはこの作用を抑制した.prazosinの前処置ではguanfacineによるcyclic AMPおよびcyclic GMPの減少変化に有意な影響は認められなかった.以上から,guanfacineの作用発現時には,特に視床下部でcyclic AMPとcyclic GMPは著明に減少するが,このcyclic nucleotidesの変化にはα2受容体が大きく関与していることが示された.
  • 友井 正明, 伊藤 立信, 上田 幸代, 小野 隆治, 柴山 文男
    1988 年 92 巻 2 号 p. 105-111
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    抗潰蕩薬 omeprazole の胃粘膜(H+-K+)ATPase 及び分離胃底腺における酸分泌に対する作用を家兎を用い検討し,またこれらに対する作用をヒスタミンH2受容体拮抗薬の famotidine と比較した.家兎胃粘膜から調製した(H+-K+)ATPase の至適測定条件は,従来のブタでの報告とは若干異なり pH7.0,2mM MgCl2及び50mM KClであった.omeprazole は,濃度依存的に本酵素に対し阻害作用を示し IC50 値は4.2μMとなったが,famoddine は最高濃度の100μMでも本酵素に対し,殆ど影響を与えなかった.分離胃底腺における酸分泌の測定は,14C-アミノピリン蓄積法により行った.ヒスタミン刺激の酸分泌に対し,omeprazole及びfamotidineはほぼ同等の抑制作用を示し,いずれもIC50値は0.35μMであった.しかし,dibutyryl cyclic AMP 刺激の酸分泌に対して,omeprazoleは抑制作用を示したが,famotidineは最高濃度の100μMにおいても抑制作用を示さなかった.このように酸分泌抑制に対する両薬剤の反応性の相違は,(H+-K+)ATPaseが酸分泌の最終過程に関与しているためである.以上のことから,omeprazoleも消化性潰瘍の治療に有用な役割を果たす薬剤であると考えられる.
  • 阿南 惟毅, 瀬戸口 通英, 妹尾 英男
    1988 年 92 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    Y-8894の放射状迷路学習に対する作用を正常動物および実験的記憶障害動物を用いて検討した.最初に誤反応(既選択アームへの再入)が生じるまでの正反応数を初期反応数とし,これを行動指標として検討し,以下の成績を得た.1)正常動物の迷路実験においてY-8894は1,2.5および5mg/kgの反復腹腔内投与により,有意に高い初期正反応数を示し,迷路学習の促進作用がみられた.dihydroergotoxineは5mg/kg腹腔内投与で10日間の実験期間のうち初期にのみ促進作用を示し,後期には逆に抑制的に作用した.calcium hopantenateでは促進作用はみられなかった.2)scopolamine投与による初期正反応数の減少に対して,Y-8894は2.5および5mg/kgの単回腹腔内投与により拮抗作用を示した.dihydroergotoxineの5およびcalcium hopantenateの500mglkg腹腔内投与でも拮抗作用がみられた.以上,Y-8894は放射状迷路実験において,dihydroergotoxineやcalcium hopantenateよりも強い学習および記憶の促進あるいは改善作用を示した.
  • 蘇木 宏之, 内田 康美, 東丸 貴信, 杉本 恒明
    1988 年 92 巻 2 号 p. 119-126
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    イヌ心不全モデルにおけるプラゾシン,新規α-ブロッカー3-〔2-〔4-(o-methoxypheny1)-1-piperaziny1〕ethyl〕-2,4,(1H,3H)-quinazolinedione monohydrochloride(SGB-1534),ドブタミン,イソプロテレノールの効果を検討した.心不全モデルは左心室自由壁へのプロテアーゼ注入,生理食塩水負荷,デキストランとメソキサミンの持続注入により作成した.これらの操作により,左房圧と総末梢血管抵抗が著明に増加し,大動脈血流量が減少して心不全モデルが作成された.このモデルにおいて,SGB-1534の0.1~10.0μg/kg,i.v.は用量依存性に左房圧を減少させ,大動脈血流量を増加させて心不全を改善した.この時,総末梢血管抵抗が著明に減少し,心筋収縮力の指標であるVmaxがわずかに増加していた.このことから,SGB-1534は,本実験の心不全モデルにおいて血管拡張作用と心筋収縮力増加作用によって心不全を改善したものと考えられた.これに対して,プラゾシンの0.1~10.0 μg/kg,i.v.は左房圧を減少させ大動脈血流量を増加させて,心不全状態を改善したが,この心不全改善効果は主にプラゾシンの末梢血管拡張作用によってもたらされたと考えられた.SGB-1534とプラゾシンのこの心不全モデルにおける効果を比較したところ,SGB-1534がプラゾシンより強い末梢血管拡張作用と,プラゾシンには認められない心筋収縮力増強作用とを有することが判明した.イソプロテレノールの0.001~0.1 μg/kg,i.v.とドブタミンの5~100 μg/kg,i.v.は心不全を心筋収縮力増加と末梢血管拡張作用によって改善すると考えられたが,ドブタミンはイソプロテレノールと比較して末梢血管拡張作用よりも,心筋収縮力増加に強く作用する傾向が認められた.このドブタミンとイソプロテレノールの作用の差には,高用量のドブタミンのα刺激作用による血管収縮作用が関与することが推察された.
  • 金塚 聰之, 畑中 佳一
    1988 年 92 巻 2 号 p. 127-143
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    Adjuvant関節炎ラット(AAラット)の各種症状および抗リウマチ薬の効果をWeibull分布に基づいて経日的に観察し,以下のことを見い出した.1)AAラットに発症する諸病変(前肢足腫脹,尾部念珠状変化,耳介結節,虹彩毛様体炎,亀頭炎)や各種の異常値〔後肢足体積,hematocrit値,体重,傾斜位姿勢保持能障害(機能障害),後肢足関節の屈曲刺激疼痛反応〕の発現率F(t)は,経日的に増加し,単純Weibull分布を示した.また足関節骨病変の経日的発現率は,複合Weibull分布を示すことから,骨病変発現速度に違いのある二群によって構成され,速い反応性を持つfast responderと遅い反応性を持つslow responderに分けることが出来た.2)重症度の異なる症例あるいは異種の症状の併発例の病態をWeibull確率紙の使用により統合でき,AAラットの病態解析を行うことが出来た.3)このWeibull分布を薬効評価に用いて,次の成績をえた.疼痛,腫脹および機能障害に対してazathioprine(AZP)は抑制効果を,indomethacin(IDM),prednisolone(PSL)およびgold sodium thiomalate(GST)は,遅延効果を示した.関節骨病変に対してIDM,PSLおよびAZPは,fast responder群にのみ抑制効果を,GSTは両群に対して抑制効果と遅延効果を示した.以上の結果は,Weibull分布の利用がAAラットの病態解析のみならず,AAラットでの抗リウマチ薬の薬効評価にて有用であることを示唆する.
  • 河野 茂勝, 山村 秀樹, 大幡 勝也, 永井 博弍, 江田 昭英, 柳原 行義, 信太 隆夫, 舛木 成幸, 吉田 洋一, 辰巳 煕, 鳥 ...
    1988 年 92 巻 2 号 p. 145-157
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    phenothiazine系の抗 histamine(Hi)剤,10-(3-quinuclidinylmethyl)phenothiazine(mequitazine)のin vitroの抗アレルギー作用を,現在繁用されている抗アレルギー薬および抗喘息薬と比較検討し,以下の成績を得た.1)摘出モルモット気管筋および肺実質のHiによる収縮はmequitazineによりいずれも強く抑制されたが,その作用の強さはketotifenの1/100~1/1000であった.acetylcholineによるこれらの標本の収縮はmequitazineにより強く抑制され(pA2=6.4および6.7),その作用はketotifenに比して若干強かった.leukotriene(LT)D4による収縮もmequitazineはいずれの標本においても抑制作用を示したが,その作用はtranilastに比して軽度であった.一方,PGFによる気管の収縮にmequitazineは影響を及ぼさなかったが,肺実質の収縮を抑制した.2)能動的感作モルモット摘出気管筋のSchultz-Dale反応を10-6g/mlのmequitazineは軽度に抑制したが,10-6g/mlのketotifenは影響を及ぼさなかった.3)摘出モルモット気管筋のCa2+influxによる収縮を10-5g/mlのmequitazineは軽度に抑制した.10-5g/mlのketotifenおよびtranilastも同程度の抑制作用を示した.4)ラット肺由来のcyclic AMP-dependent phosphodiesterase活性をmequitazineは競合的に阻害し,その作用はketotifenの10倍,theophyllineの5倍強力であった.5)10-6および10-5Mのmequitazineはラット腹腔細胞からのアナフィラキシー性およびphospholipase A2によるHi遊離を抑制したが,その作用はtranilastと同程度か,あるいは若干弱く,また,disodium cromoglycate(DSCG)より若干弱かった.6)瑞息患者もしくは健常者白血球からの抗原,antihuman IgE antibodyもしくはCa ionophore A23187によるHi遊離を10-5g/mlのmequitazineは抑制した.7)受動的感作ヒト肺からの抗原によるHi,正TB4およびpeptideLT遊離を10-7~10-5g/mlのmequitazineは濃度依存的に抑制し,その作用はketotifenに比して強かった.また,10-5g/mlのtranilastおよびDSCGもいずれのメジエイター遊離に対してもかなり強い抑制作用を示した.
  • 河野 茂勝, 山村 秀樹, 大幡 勝也, 土河 三千紀, 永井 博弍, 江田 昭英, 柳原 行義, 信太 隆夫, 八塚 厚, 吉田 洋一, ...
    1988 年 92 巻 2 号 p. 159-165
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    phenothiazine系の抗histamine剤,mequitazineのin vivoの抗アレルギー作用について,ketotifenおよびdisodium cromoglycate(DSCG)を比較薬として検討し,以下の成績を得た.1)mequitazine 2および5mg/kgの反応惹起1時間前の経口投与はラットの48-hr passive cutaneousanaphylaxisを用量依存的に抑制し,mequitazine 5mg/kgはketotifen 1mg/kgと同程度の抑制作用を示した.また,DSCG 1mg/kgの反応惹起5分前の静脈内投与も強い抑制作用を示した.2)受動的感作モルモットに抗原を静脈内注射して惹起した実験的喘息による呼吸機能の低下に対して,mequitazine 2mg/kgの反応惹起1時間前の経口投与ではやや抑制の傾向を示すにすぎなかったが,5mg/kgでは強い抑制作用を示した.3)受動感作モルモットに抗原を気道内噴霧して惹起した実験的喘息に対しても,抗原の静脈内注射の場合と同様に,mequitazineの2mg/kgでは軽度の抑制傾向を,5mg/kgでは強い抑制作用を示した.
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