日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
非ステロイド系酸性鎮痛抗炎症剤 480156-S によるラット肝薬物代謝酵素活性の阻害と併用薬の薬効発現への影響
松原 尚志広瀬 勝己畠山 久男城山 博邦戸内 明大坪 龍
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 92 巻 4 号 p. 201-213

詳細
抄録

ラットの肝薬物代謝酵素活性および併用薬の薬効発現に及ぼす非ステロイド系鎮痛抗炎症薬 480156-Sの影響を検討し ibuprofen や cimetidine の作用と比較した.P-450依存性の 7-alkoxycoumarin O-dealkylase 活性は 480156-S単回投与によっては影響をうけなかったが,薬物を3日間以上連続投与すると投与量に相関して活性は低下した.対照薬物 ibuprofen投与によっても軽度ではあるが酵素活性の低下がひきおこされた.一方 cimetidine 投与ラットでは投与回数に関係なく投与直後に著しい酵素活性の低下がみられたが,投与24時間後には正常レベルにまで回復した。480156-S 連続投与による肝酵素活性の低下は demethylation 活性で最も著しく depropylation活性への影響は軽度であった.phenobarbital 投与ラットでは 480156-S 処置の影響が認められなかった.480156-S投与により肝薬物代謝酵素機能の低下したラットに diazepam を併用投与すると,diazepam の特徴的な薬理作用である筋弛緩作用,抗電撃痙攣作用および抗 pentetrazole 痙攣作用が持続延長して観察された.ibuprofen 投与ラットでも軽度ではあるが類似の現象が認められた.cimetidine 投与では著しい薬理作用の持続延長が認められた.一方 pentobarbital 誘導麻酔時間は cimetidine 投与では著しく延長したが,480156-S 投与による影響は認められなかった.これらの結果は肝薬物代謝酵素活性と併用薬の薬効発現とは密接に相関していることを示すと共に,P-450の関与する全ての機能が 480156-S によって影響をうけるのではなく,特定の P-450 isozyme の機能のみが阻害されることを推察させるものであった.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
次の記事
feedback
Top