日本薬理学雑誌
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92 巻 , 4 号
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  • 松原 尚志, 広瀬 勝己, 畠山 久男, 城山 博邦, 戸内 明, 大坪 龍
    1988 年 92 巻 4 号 p. 201-213
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    ラットの肝薬物代謝酵素活性および併用薬の薬効発現に及ぼす非ステロイド系鎮痛抗炎症薬 480156-Sの影響を検討し ibuprofen や cimetidine の作用と比較した.P-450依存性の 7-alkoxycoumarin O-dealkylase 活性は 480156-S単回投与によっては影響をうけなかったが,薬物を3日間以上連続投与すると投与量に相関して活性は低下した.対照薬物 ibuprofen投与によっても軽度ではあるが酵素活性の低下がひきおこされた.一方 cimetidine 投与ラットでは投与回数に関係なく投与直後に著しい酵素活性の低下がみられたが,投与24時間後には正常レベルにまで回復した。480156-S 連続投与による肝酵素活性の低下は demethylation 活性で最も著しく depropylation活性への影響は軽度であった.phenobarbital 投与ラットでは 480156-S 処置の影響が認められなかった.480156-S投与により肝薬物代謝酵素機能の低下したラットに diazepam を併用投与すると,diazepam の特徴的な薬理作用である筋弛緩作用,抗電撃痙攣作用および抗 pentetrazole 痙攣作用が持続延長して観察された.ibuprofen 投与ラットでも軽度ではあるが類似の現象が認められた.cimetidine 投与では著しい薬理作用の持続延長が認められた.一方 pentobarbital 誘導麻酔時間は cimetidine 投与では著しく延長したが,480156-S 投与による影響は認められなかった.これらの結果は肝薬物代謝酵素活性と併用薬の薬効発現とは密接に相関していることを示すと共に,P-450の関与する全ての機能が 480156-S によって影響をうけるのではなく,特定の P-450 isozyme の機能のみが阻害されることを推察させるものであった.
  • 西木 克侑, 西永 こずえ, 工藤 大悟, 岩井 克己
    1988 年 92 巻 4 号 p. 215-225
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    クロトン油混合液をラット直腸肛門部に塗布し起炎させることにより,痔疾モデルを作製することを試みた,クロトン油混合液(水:ピリジン:エチルエーテル:6%クロトン油=1:4:5:10容)0.16mlを浸み込ませた綿球を,軽度のエーテル麻酔下で6週齢ラット(体重1450g)の肛門内に10秒間挿入することが,浮腫と組織所見に基づいて判断された起炎最適条件であった.浮腫は起炎剤塗布後7~8時間まで直線的に増大し,24時間以上維持された.起炎剤塗布6時間後の解剖所見では,起炎剤塗布部位に肉眼的に均一な,しかも再現性のすぐれた炎症像が認められた.また,光学顕微鏡による組織学的観察により,浮腫,フィブリンの浸潤,炎症性細胞の出現,血管拡張,うっ血,粘膜上皮細胞の中~強度の壊死などの所見が認められ,痔疾の主症状である腫脹とうっ血などを含む炎症症状に対する薬物の作用を検討するためのモデルとして有用であると考えられた.上記モデルで直腸肛門管部の湿重量と血管透過性を指標として diflucortolone valerate,hydrocortisone caproate,hydrocortisone の抗炎症効果を測定した結果,臨床での血管収縮作用が最強である diflucortolone valerate が最も強い効果を発揮した.この事実は本モデルで炎症症状に対する薬効評価を行なうことが可能であることを示唆している.さらに痔疾治療製剤 Neriproct®,Scheriproct®,Posterisan Forte®,Posterisan®,Borraginol N®の薬効を同様に測定した結果,Neriproct®とScheriproct®は予防効果の測定でほぼ等しく,他剤よりも有意に強い抗炎症効果を示した.治療効果の測定ではNeriproct®は抗炎症効果を示したが,Scheriproct®は効果がなく,その他の製剤ではむしろ炎症を増悪させる作用が認められた.
  • 西木 克侑, 工藤 大悟, 西永 こずえ, 岩井 克己, 中川 英彦
    1988 年 92 巻 4 号 p. 227-240
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    クロトン油混合液(CWPE)誘発痔疾モデルラットの肛門内にクリーム剤としてdiflucortolone valerate(DFV),prednisolone(PS),hydrocortisone caproate(HC),hydrocortisone(H)を投与した時,DFVが最強の抗炎症効果を示した.このDFVの抗炎症効果は lidocaine(LDC)の配合によって影響を受けなかった,一方,炎症局所でのLDCの鎮痛効果はDFVとの配合によりDFVの消炎作用に基づく発痛閾値の正常化と相俟って見かけ上延長された.すなわち,DFVとLDCの配合により,LDCのもつ速効性の鎮痛作用に加えてDFVの消炎作用に起因する遅効性の鎮痛効果も期待しうることが示された.これらの結果と一致して,DFVとLDCの配合剤 Neriproct®はCWPE痔疾モデルのみならず,擦過刺激痔疾モデルでも,HCを含有する Scheriproct®,Hを含有する Proctsedyl®とPosterisan forte®,グルココルチコイドを含有しない Borraza G®,Borraginol N®,Posterisan®などの痔疾治療剤よりも強い抗炎症作用を示した.CWPE処置直後に Neriproct®クリームを投与したラットの直腸組織の顕微鏡観察では,粘膜上皮の剥離,粘膜層の壊死,炎症性細胞の浸潤,うっ血などが著しく抑制され,抗炎症効果を裏付ける組織所見が認められた.Neriproct®のCWPE痔疾モデルでの抗炎症効果にはクリーム剤と坐剤とで差が見られなかった.創傷治癒抑制作用も抗炎症作用と同様にDFVがPS,HC,Hよりも強かったが,両作用の効力比(創傷治癒抑制 ID50/炎症抑制 ID50)はDFVが最大であり,他のグルココルチコイドに比して安全域が広いと推測された.
  • 亀山 勉, 鍋島 俊隆, 加藤 晃, 小川 伸一
    1988 年 92 巻 4 号 p. 241-250
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    受動的回避学習法を用いて,cycloheximide(CXM,1.5mg/kg),scopolamine(SCOP,1.5mg/kg)及びbasal-forebrain(BF)破壊(1.2mA D.C.for 15sec)誘発健忘モデルラットに対する naftidrofuryl oxalate(LS-121)の抗健忘作用を,Ca-hopantenate(HOPA)及びphysosdgmine(PHY)の抗健忘作用と比較検討した,保持試行においては暗室に入るまでの時間(step-through latency: ST潜時)を最高600秒まで測定し,300秒以上のST潜時を示したラットの割合〔基準到達率(%)=100×(300秒以上のST潜時を示したラットの匹数/実験に用いたラットの匹数)〕を求めた.なお被験薬投与群の両指標と健忘モデルのそれらとの間に有意差が得られた場合は学習・記憶改善作用陽性とし,片指標にのみ有意差がみられた場合は学習・記憶改善傾向とした.CXM 及び SCOP 誘発健忘モデルに対してLS-121(25mg/kg)及びPHY(0.1mg/kg)は獲得試行前,直後及び保持試行前のいずれの場合に投与しても学習・記憶改善作用陽性又は改善傾向を示し,HOPAはCXM誘発健忘モデルに対して獲得試行直後の場合にのみ改善傾向を示し(200mg/kg),SCOP誘発健忘モデルに対し獲得試行前の場合にのみ改善傾向を示した(400mg/kg).BF破壊誘発健忘モデルに対して,LS-121は獲得試行直後の場合にのみ改善傾向を示し,PHYは獲得試行前及び直後の場合に改善傾向を示した.今回の結果より LS-121は,acetylcholine 作動性神経系を直接的又間接的に活性化することにより抗健忘作用を発現すると考えられた.一方,保持試行前に投与した場合にも有効であった為,健忘がすでに起きている場合にも改善作用を示す可能性が示された.また,BF破壊誘発健忘モデルに対して抗健忘作用を示した為,Alzheimer型老年痴呆の患者に対しても治療効果を示す可能性が示唆された.
  • 須藤 和彦, 本多 一裕, 滝 昌之, 蟹谷 昌尚, 藤井 祐一, 油田 正樹, 細谷 英吉, 木村 正一, 折笠 精一
    1988 年 92 巻 4 号 p. 251-261
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    抗悪性腫瘍剤 adriamycin(ADR)の低用量をマウスに長期間投与することにより造精機能障害を誘発し,この障害に対する TJ-41の効果を精巣の組織学的解析により検討した。ADRは0.15mg/kgを週2回の割合で5週間腹腔内投与した.また,TJ-41は1,2および4g/kgを ADR の初回投与日よりそれぞれ12週間連日経口投与した.TJ-41 4g/kg併用投与群の精巣重量は,ADR単独投与群のそれに比較し有意に(P<0.05)高値を示した.さらに精巣の組織学的解析を行ったところ,ADR単独投与群では,精細胞がすべて消失しセルトリ細胞(支持細胞)のみとなった精細管が16.3%であったのに対し,TJ-41 1,2および 4g/kg併用投与群のそれは,5.8%(P<0.01),9.7%および6.4%(P<0.01)にそれぞれ減少した.また ADR 単独投与群では障害を受けていない精細管,すなわち,spermatids の段階9~12と段階13~16を認めた精細管が14.5%と36.0%であったのに対し,TJ-41 1,2および 4g/kg併用投与群では,それぞれ20.1%と47.8%(P<0.01),16.0%と45.5%,15.6%と54.1%(P<0.01)に増加した.さらに,TJ-41 1,2および 4g/kg併用投与群の spermatocytes の sertoli cell ratio の対数値は,それぞれ0.23(P<0.05),0.13および0.27(P<0.05)であり,ADR単独投与群におけるその対数値0.04に比べ高値を示した.以上のことから,TJ-41は ADR によるマウス精巣の造精機能障害に対し,質的および量的に効果を示すことが示唆された.
  • 三澤 美和, 今村 直人
    1988 年 92 巻 4 号 p. 263-270
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    気道分泌物(痰)は高分子の糖蛋白を主成分とし,不均一でかつ非ニュートン流体であるため,その粘稠度の測定は非常に困難である.今回,粘液溶解性去痰薬の in vitro におけるスクリーニング法の考案を試みた.粘液としてブタ胃 mucin を tris-HCl緩衝液にて溶解し20%液として用い,被験薬(mucolytics)とpH7.0にて37°C,30分間インキュベートし,粘稠度はガラス板法と回転粘度計法により測定した.システイン系粘液溶解薬である acetylcysteine(10-3~10-1M)および ethylcysteine(10-3~10-1M)はガラス板法,回転粘度計法いずれにおいても同程度の強力な粘稠度低下効果が観察されたが,carbocysteine の作用はインキュベーション液の液性がpH7.0では認められず,pH6.0で発現した.蛋白分解酵素である α-chymotrypsin(0.1~10mg/ml)では両方法で同様に強い粘稠度低下効果が認められ,一方,bromhexine(3×10-4~3×10-3M)では効果が認められなかった.以上,ブタ胃 mucin を用いて粘液溶解性去痰薬の効果を in vitroにて明白に評価することができた.この場合,ガラス板法では,回転粘度計とほぼ同様な成績を得ることができ,必要サンプル量,測定時間,経費などを考慮すると多くの長所が認められた.
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