日本薬理学雑誌
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心選択性β-遮断薬Betaxololの実験高血圧ラットにおける抗高血圧作用
別所 秀樹鈴木 じゅん子成松 明博戸部 昭広
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1990 年 95 巻 6 号 p. 347-354

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抄録
心選択性のβ遮断薬であるbetaxololの実験高血圧ラットにおける抗高血圧作用とその機序について,atenolol及びpropranololと比較検討した.抗高血圧既発症の高血圧自然発症ラット(SHR)においてbetaxololは単回経口投与で1mg/kgから用量依存性の降圧と心拍数減少を示した.10mg/kgによる降圧は24時間持続していた.atenololもほぼ同等の抗高血圧作用を示したが,propranololは10mg/kgでわずかな降圧を示すにとどまった。betaxololは腎性高血圧ラット,DOCA一食塩高血圧ラット,正常血圧ラットにおいても降圧を生じたが,その程度はSHRにおける降圧と比較すると弱かった.SHRにおける3週間の連続投与実験ではbetaxololの降圧作用に耐性は認められなかった.pithedratにおいて脊髄神経の電気刺激による昇圧を,betaxololは1mg/kg,i.v.から用量に依存して抑制した.また,norepinephrine(NE)による昇圧に対してもbetaxololは抑制を示した・atenololも神経刺激昇圧をlmglkgから用量に依存して抑制したが,NE昇圧に対しては抑制を示さなかった・SHRの脳室内にbetaxololを投与しても降圧作用は認められなかった.SHRの血漿レニン活性はbetaxolol10mg/kg,p.o.で低下したが,6時間後には元のレベルに回復した.以上の結果より,betaxololは実験高血圧ラットにおいて単回および連続経口投与で抗高血圧作用を示すことが判明した.その作用機序としては,血管拡張作用による総末梢血管抵抗の低下が示唆された.また,作用機序の一部には交感神経シナプス前膜β受容体遮断作用の関与も推定された.
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