日本薬理学雑誌
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実験的変形性関:節症に対するNeurotropinの作用
東口 高志呉 晃一郎
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1990 年 96 巻 4 号 p. 153-161

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抄録

変形性関節症に対するNeurotropinの作用をprednisoloneおよびindomethacinと比較検討し以下の成績を得た。1)papainをウサギの膝関節腔内に注入することにより誘発した実験的変形性関節症モデルでは,関節軟骨におけるsafranin-0染色性,ウロン酸,総ヘキソサミンおよびヘキソース含量の著しい低下が認められ,軟骨基質中のプロテオグリカソ含量の低下が推察された.Neurotropin投与群ではpapain注入による関節軟骨基質におけるsafranin-O染色性,ウロン酸,総ヘキソサミンおよびヘキソース含量の低下は明らかに回復した.一方,prednisoloneおよびindomethacin投与群では軟骨変性はpapain処置対照群に比してさらに悪化した.2)Neurotropinは関節軟骨の自己融解現象に対しては何ら作用を及ぼさなかったが,軟骨基質プロテオグリカン中への14C-acetateの取り込みを有意に促進した.3)prednisoloneおよびindomethacinは関節軟骨の自己融解現象および軟骨基質プロテナグリカン中への14C-acetateの取り込みをともに顕著に抑制した.以上の成績より,Neurotropinは変形性関節症に対してprednisoloneやindomethacinなどの抗炎症薬とは異なり,関節軟骨基質におけるプロテオグリカン含量の低下を改善することにより治療効果を有することが推察された.

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