日本薬理学雑誌
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実験的マウス耳介熱傷モデルを用いた熱傷時血管透過性に関する研究
安藤 和正礒野 恵美子久保田 賢子芋川 英紀井上 肇石田 寛友荻野 洋一
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1990 年 96 巻 6 号 p. 323-332

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抄録

実験的な簡易熱傷モデルの作成を試み以下の結果を得た.1)マウス耳介を,100°C,5秒間処理することで.II度熱傷を作成できた.2)耳介熱傷作成後,耳介重量が3時間迄増加し以後漸減した.3)耳介熱傷作成後,熱傷側耳介と正常側耳介重量との重:量比は3時間で最大となり,以後漸減した.4)耳介熱傷作成後,熱傷側耳介へのEB漏出が認められ,耳介当りのEvans blue(EB)漏出量は,3時間で最大となり,単位重量当りでは,24時間後に最大となった.5)EB色素の漏出量と耳介重量との間に正の相関が認められ,特に1~3時間後に高度の相関性が得られた.6)初期の血管透過性亢進を抗ヒスタミン薬と副腎皮質糖質ステロイドが抑制した.そして,非ステロイド系抗炎症薬は無効であった.7)熱傷創面のヒスタミン総量に有意な差はなかった.しかし,ブラジキニンは有意な増加を認めた.以上の事から,血管透過性を指標とする本熱傷モデルは,簡易で薬理学的な又は生化学的な検討をする上で有益なモデルとなる可能性が考えられた.

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