日本薬理学雑誌
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選択的Thromboxane A2(TXA2)合成酵素阻害剤Y-20811のモルモット気道収縮反応に対する作用
鹿子嶋 正彦友松 貴子福田 哲子三ヶ島 浩寺澤 道夫
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1991 年 97 巻 5 号 p. 277-286

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抄録
ケミカルメディエーターにより誘発されるモルモット気道収縮とその時肺灌流液中に遊離されるケミカルメディエーター量に対するY-20811の作用を検討した.acetyl salicylic acidやindomethacinと同様にY-20811は0.01~1mg/kg,i.v.で用量に依存してarachidonic acidおよびLTD4により誘発されるモルモット気道収縮を抑制した.また,Y-20811(1mg/kg,i.v.)はPAFによるモルモット気道収縮も抑制した.Y-20811は経口投与でも0.3~10mg/kgでLTD4により誘発されるモルモット気道収縮を用量依存的に抑制し,10mg/kgでは抑制作用が投与24時間後まで持続した.しかし,Y-20811(1mg/kg,i.v.,10mg/kg,p.o.)はhistamine,serotonin及びacetylcholineによるモルモット気道収縮を抑制しなかった.mepyramineで前処置した受動感作モルモットでY-20811(10mg/kg,p.o.)は抗原誘発気道収縮を抑制した。arachidonic acidにより誘発されるモルモット気道収縮をY-20811(10mg/kg,p.o.)は抑制し,またその時肺灌流液中に遊離されるTXA2(TXB2として測定)の産生量を減少させ,PGE2の産生量を増加させた(TXB2およびPGE2の産生量はHPLCにより測定).LTD4およびPAFによる気道収縮時にもTXA2が産生されていることが明らかにされている.以上のことからY-20811がケミカルメディエーターにより誘発されるモルモット気道収縮を抑制するのはTXA2の産生量を減少させ,PGE2の産生量を増加させることに基づくことが示唆された.これらの成績からY-20811は新しい抗喘息薬としての有用性が期待される.
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