抄録
cemitin pollen extract(CN-009)は数種の花粉の抽出物で,前立腺肥大による排尿困難に使用されている.しかし,排尿機構に対する作用は,未だ完全には解明されていない.CN-009の膀胱に及ぼす影響を,摘出下部尿路平滑筋およびラット生体位膀胱を用い,いくつかの薬物の作用と比較検討した.CN-009はラット,モルモット,ネコの摘出排尿筋を濃度依存的に収縮させた.ラットに:おけるCN-009の排尿筋収縮作用はatropineにより抑制されたが,diphenhydramine,phentolamine,indomethacinでは抑制されなかった.モルモットの摘出排尿筋に対する収縮作用はatropineおよびdiphenhydramineにより抑制され,cimetidineにより増強された.成熟ラット(11~23週齢,200~350g)ではCN-009は静脈内投与で用量依存的に膀胱内圧上昇を示した.CN-009による膀胱内圧上昇反応は,ACh反応低下を示す老齢ラット(2年齢,350~770g)においても成熟ラットと同様で差を認めなかった.成熟ラットにおいてCN-009の膀胱内圧上昇作用はatropineにより完全に,phentolamine,guanethidineにより一部抑制された.またラットにおけるCN-009の3週間経口投与は基礎膀胱内圧の上昇傾向を示し,serotoninによる反応が有意に増強された.以上の結果はCN-009は主に副交感神経M受容体を介し,交感神経α受容体,動物種によってはH1受容体を介して膀胱平滑筋を収縮させることにより膀胱内圧を高めることを示唆する.また,CN-009長期投与は,膀胱平滑筋の薬物感受性に影響を与え,膀胱平滑筋の収縮力を高めることにより,排尿に対し促進的に作用することを示唆する.