日本薬理学雑誌
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97 巻, 5 号
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  • 胃全摘後のラット逆流性食道炎に対するFOY-305の作用
    上安 功明, 粟田 浩, 井尻 章悟, 土居 晃, 大廻 長茂, 桶川 忠夫, 川崎 晃義, 四宮 啓祐, 田中 雅治, 鈴木 祥郎, 佐々 ...
    1991 年 97 巻 5 号 p. 241-249
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    ラットに胃全摘,食道空腸吻合術(Billoth-II法)を施行して逆流性食道炎モデルを作製し,FOY-305の術後食道病変に対する効果をsodium alginate(AL-Na)およびcimetidineと比較検討した.本モデルでは術後5日目から食道潰瘍を認めたことから,被検薬は潰瘍発症前の術後2日目および発症後の7日目から投与を開始し,それぞれ,実験IおよびIIとした.その結果,実験IにおいてFOY-305(1000ppm)は,術後7日目および14日目に食道潰瘍の発生を有意に抑制した.一方,AL-Naは術後7日目ではFOY-305(1000ppm)と同等の抑制効果を示したが,術後14日目ではこの効果は減弱した.実験IIにおいては,FOY-305は術後21日目で著明な治療的効果を示し,病理組織学的にも食道潰瘍を抑制し,潰瘍部の上皮の再生を促進していた.また,FOY-305投与群では,術後の摂餌量,体重の増加率も対照群と比べて改善された.しかし,AL-Naおよびcimetidine(1000ppm)は術後21日目では効果を示さなかった.以上の結果は,FOY-305が胃全摘後の逆流性食道炎に対し明らかな抑制効果を有することを示している.
  • 胃全摘後のラット逆流性食道炎発生機序の解析
    上安 功明, 井尻 章悟, 大廻 長茂, 桶川 忠夫, 川崎 晃義
    1991 年 97 巻 5 号 p. 251-257
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    胃全摘後の逆流性食道炎の発生要因としては,膵液および胆汁の食道内への逆流が重要である.我々は,すでにFOY-305がラットの胃全摘後の食道炎に対し有効であることを第1報で示した.そこで,今回は胃全摘,食道空腸吻合術(Billroth-II法)を施行したラットの食道内洗浄液中のtrypsin活性および胆汁酸濃度に対するFOY-305の効果を検討した.その結果,FOY-305は投与開始2および4時間後でtrypsin活性を完全に抑制した.一方,胆汁酸濃度に対しては,4時間後で対照群に比し有意に低下させた(P<0.05).さらに,我々はtrypsinとsodium taurocholate(Tc-Na)のラット摘出食道に対する傷害作用についても食道粘膜からのtyrosineの遊離を指標に検討した.Tc-Naは腸液中のその濃度の3倍の用量でもわずかな傷害作用しか示さず,trypsinと共に作用させても相乗的な作用を認めなかった.一方,trypsinは明らかに食道粘膜からのtyrosineの遊離を惹起したが,この作用はFOY-305(50μM)により有意に抑制された(P<0.001).以上の結果は,食道炎の発生因子としてのtrypsinの重要性を示唆するものであり,また,trypsin阻害剤であるFOY-305が本病態に対して抑制効果を有することを説明するものである.
  • 宮田 久嗣, 広中 直行, 安東 潔
    1991 年 97 巻 5 号 p. 259-266
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    SD系雄性ラットを用い,遅延弁別反応に対するコリン作動性神経毒とされるethylcholine mustard aziridinium ion(AF64A)の脳室内投与による影響を観察した.さらに,これらのラットにnicotine,arecolineおよびphysostigmineを皮下投与して同反応に対する効果を検討した.餌強化によるオペラント実験箱事態で,正面のパネルの左右のレバー上のランプのうち一方を点灯した後消灯し,一定の遅延時間(0.1,4,16秒)経過後に中央上方のランプを点灯した.このときラットが先のランプ点灯側のレパーを押した場合にこれを正選択反応とした.そして,正選択率(総反応試行数に対する正選択試行数のパーセンテージ)と反応潜時(中央上方のランプ点灯からレバー押し反応開始までに要する時間)を観察した.この結果,正選択率は遅延時間に依存して減少した.一方,反応潜時は遅延時間の延長により増加する傾向を示したが,この変化は遅延時間依存的ではなかった.AF64Aは6nmolの脳室内投与により遅延4秒で正選択率を減少させ,この効果は遅延時間に依存的であった.また,AF64Aは遅延16秒で反応潜時を減少させたが,遅延時間との関係は認められなかった.このAF64Aを投与されたラットの遅延4秒の遅延弁別反応に対する3種類のコリン作動薬の効果を累積用量手続きによって検討した.nicotineは0.12mg/kgの皮下投与により正選択率を改善させ,0.12~0.48mg/kgで反応潜時を減少させた.一方,arecolineは4mg/kg,physostigmineは0.06~0.24mg/kgの皮下投与により反応潜時を増加させたが,いずれの薬物も正選択率には明らかな影響を与えなかった.以上のことから,今回の遅延弁別反応の実験事態で,遅延時間と正選択率の関係からラットの記憶を検索できると考えられた.そして,AF64Aの脳室内投与により遅延弁別反応が障害され,この障害をnicotineが改善させることが示された.
  • 小野寺 禎良, 吉永 雅一, 武永 邦三, 豊嶋 穆, 内山 利満
    1991 年 97 巻 5 号 p. 267-276
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    cemitin pollen extract(CN-009)は数種の花粉の抽出物で,前立腺肥大による排尿困難に使用されている.しかし,排尿機構に対する作用は,未だ完全には解明されていない.CN-009の膀胱に及ぼす影響を,摘出下部尿路平滑筋およびラット生体位膀胱を用い,いくつかの薬物の作用と比較検討した.CN-009はラット,モルモット,ネコの摘出排尿筋を濃度依存的に収縮させた.ラットに:おけるCN-009の排尿筋収縮作用はatropineにより抑制されたが,diphenhydramine,phentolamine,indomethacinでは抑制されなかった.モルモットの摘出排尿筋に対する収縮作用はatropineおよびdiphenhydramineにより抑制され,cimetidineにより増強された.成熟ラット(11~23週齢,200~350g)ではCN-009は静脈内投与で用量依存的に膀胱内圧上昇を示した.CN-009による膀胱内圧上昇反応は,ACh反応低下を示す老齢ラット(2年齢,350~770g)においても成熟ラットと同様で差を認めなかった.成熟ラットにおいてCN-009の膀胱内圧上昇作用はatropineにより完全に,phentolamine,guanethidineにより一部抑制された.またラットにおけるCN-009の3週間経口投与は基礎膀胱内圧の上昇傾向を示し,serotoninによる反応が有意に増強された.以上の結果はCN-009は主に副交感神経M受容体を介し,交感神経α受容体,動物種によってはH1受容体を介して膀胱平滑筋を収縮させることにより膀胱内圧を高めることを示唆する.また,CN-009長期投与は,膀胱平滑筋の薬物感受性に影響を与え,膀胱平滑筋の収縮力を高めることにより,排尿に対し促進的に作用することを示唆する.
  • 鹿子嶋 正彦, 友松 貴子, 福田 哲子, 三ヶ島 浩, 寺澤 道夫
    1991 年 97 巻 5 号 p. 277-286
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    ケミカルメディエーターにより誘発されるモルモット気道収縮とその時肺灌流液中に遊離されるケミカルメディエーター量に対するY-20811の作用を検討した.acetyl salicylic acidやindomethacinと同様にY-20811は0.01~1mg/kg,i.v.で用量に依存してarachidonic acidおよびLTD4により誘発されるモルモット気道収縮を抑制した.また,Y-20811(1mg/kg,i.v.)はPAFによるモルモット気道収縮も抑制した.Y-20811は経口投与でも0.3~10mg/kgでLTD4により誘発されるモルモット気道収縮を用量依存的に抑制し,10mg/kgでは抑制作用が投与24時間後まで持続した.しかし,Y-20811(1mg/kg,i.v.,10mg/kg,p.o.)はhistamine,serotonin及びacetylcholineによるモルモット気道収縮を抑制しなかった.mepyramineで前処置した受動感作モルモットでY-20811(10mg/kg,p.o.)は抗原誘発気道収縮を抑制した。arachidonic acidにより誘発されるモルモット気道収縮をY-20811(10mg/kg,p.o.)は抑制し,またその時肺灌流液中に遊離されるTXA2(TXB2として測定)の産生量を減少させ,PGE2の産生量を増加させた(TXB2およびPGE2の産生量はHPLCにより測定).LTD4およびPAFによる気道収縮時にもTXA2が産生されていることが明らかにされている.以上のことからY-20811がケミカルメディエーターにより誘発されるモルモット気道収縮を抑制するのはTXA2の産生量を減少させ,PGE2の産生量を増加させることに基づくことが示唆された.これらの成績からY-20811は新しい抗喘息薬としての有用性が期待される.
  • 星野 隆一, 鹿児島 正豊, 島田 英世
    1991 年 97 巻 5 号 p. 287-296
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    新規の3-hydroxymethyl-2-methylimidazo〔2,1-b〕benzothiazole(NIK-228)の胃液分泌抑制作用および抗胃・十二指腸潰瘍作用を検討した.実験動物は,雄性Wistar系ラット(200~250g)を24~48時間絶食下で使用した.NIK-228およびfamotidineを経口投与によって前処置し,1時間後に各実験を行なって,その予防的作用を調べた.幽門結紮法を用いて胃液分泌におよぼす作用を検討したところ,NIK-228は,10~100mg/kgの投与により,famotidineは,0.3~3mg/kgの投与により用量依存的に胃酸分泌の抑制が認められた.水浸拘束ストレス潰瘍,インドメタシン潰瘍およびShay潰瘍に対して,NIK-228は,10~100mg/kgの投与により用量依存的な抑制作用が認められた.これに対しfamotidineは,0.03~0.3mg/kgの投与により,水浸拘束ストレス潰瘍に対して,用量依存的な抑制作用が認められ,インドメタシン潰瘍に対しては,0.3~3mg/kgの投与により用量依存的な抑制作用が認められた.しかし,Shay潰瘍に対して,famotidineは,0.3~3mg/kgの投与で著明な抑制作用が認められなかった.エタノール潰瘍および0.6N塩酸潰瘍に対して,NIK-228は,ED50値がそれぞれ2.7および5.6mg/kgと著明な抗潰瘍作用を示したが,famotidineでは,3mg/kgの投与を行なっても有意な抑制が認められなかった.システアミン十二指腸潰瘍に対して,NIK-228は,30および100mg/kgの投与で,famotidineでは,3mg/kgの投与で有意な抑制が認められた.以上のことより,NIK-228は胃酸分泌抑制作用を有し,ラット急性実験胃・十二指腸潰瘍に対して抗潰瘍作用を有する薬物であり,famotidineでは著明な抗潰瘍作用が認められなかったエタノール潰瘍および0.6N塩酸潰瘍に対して,NIK-228が,胃酸分泌抑制作用を発現しない低用量で著明な抗潰瘍作用が得られたことから,胃酸分泌抑制作用と防御因子増強作用を併せ持った薬剤である可能性が推察された.
  • 近藤 いづみ
    1991 年 97 巻 5 号 p. 297-306
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    歯の支持組織である歯根膜の機能を解明する目的で,コラーゲン重合阻害薬の一つであるβ-aminopropionitrile(BAPN)をラットに投与し,摘出した下顎第一臼歯近心根の横断切片を作製し,歯に押し荷重を加えることによって得られた応力-歪曲線の解析を行った.実験群の動物には,飲料水に溶解した0.2%のBAPNを20日間にわたり自由摂取させた.また対照群の動物には,対応する実験群の動物が前日に摂取した餌の量と同量の餌を与えた.ついで,歯,歯根膜および歯槽骨を含む下顎の横断切片を作製し,軟X線写真を撮影し,得られた写真像を画像解析に用いた―機械的反応の測定に際しては,歯の断面に7mm/minの速度で,萌出方向に押し荷重を加え歯根を顎骨から押し抜いた.その際,ロードセルにより荷重変化を,非接触型変位計により押し距離を記録した.BAPN投与により下顎骨に外骨症の発現が認められたが,それ以外の障害は比較的軽微であった.BAPNの摂取量は実験日数の経過に伴ってやや減少する傾向を示した.体重100gあたりの摂取量は20~30mg/dayの範囲にあった.歯および歯槽骨の周囲長,歯根膜の断面積,歯根膜の平均の厚さなどには,実験群と対照群の間で有意差は認められなかった.応カ-歪曲線の解析から,ラット下顎第一臼歯近心根歯根膜においては,BAPN投与により,最大勢断応力は対照群の42%,勢断弾性率は43%,破壊エネルギーは43%に低下することが判明した.しかし,最大勇断歪については,実験群と対照群の間に有意差は認められなかった.荷重-変形曲線の解析によってもほぼ同様の結果が得られた.BAPN投与による歯根膜の機械的性質の変化は,歯根膜コラーゲン線維の重合阻害によって引き起こされたものと考えられる.
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