日本薬理学雑誌
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Ketoconazoleの前立腺癌成長抑制作用と睾丸,副腎Androgen産生に及ぼす影響
増渕 美子渡辺 実熊井 俊夫田中 政巳赤池 真理平井 正直
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1991 年 98 巻 4 号 p. 283-292

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抄録
これまでに前立腺癌に対する去勢とestrogen併用療法による予後増悪のメカニズム及び顎下腺摘出による癌発育抑制について報告したが,去勢により癌発育が有意抑制されなかった一因として副腎由来androgenの増加を示した.抗真菌薬として使用されるimidazole誘導体のketoconazole(keto.)は,睾丸や副腎でandrogen合成の抑制が報告された.今回は,実験的前立腺由来移植癌を用い,去勢し,睾丸由来androgenの影響を除去し,更にketo.投与を併用して,副腎でのandrogen合成も抑制した環境下で,癌発育成長を観察し,steroidogenesisを検討した.全換気式空調下で飼育した40日齢のDonryu系雄ラットに前立腺由来移植癌(prostatic squamous cell carcinoma P-770511の286代目)を前立腺前葉内に移植し,その8日後に去勢及びketo.の投与を開始し,移植28日後に断頭した.keto.は,5又は10mg/ratの用量を20日間毎日一回背部皮下に投与した.移植癌の発育成長は,keto.投与で抑制されたが,去勢のみでは有意な抑制はなく,keto.との併用で有意抑制された.移植によって低下したandrogenは,keto.投与によって増加した.無傷群(lntact)にketo.投与で,血漿及び副腎内corticosteroneは有意低値を示し,一方,血漿及び睾丸androgenは低値傾向を示したが有意差はなかった.移植時に去勢すると,血漿中androgenは低下したが,副腎△4-androstenedione(△4-A)は高値を示した.移植・去勢時にketo.投与で血漿中androgenは高値を示し,副腎△4-Aも高値を示した.これらの事から,keto.は,androgenレベルを低下せずに癌の発育を抑制することが明らかとなった.又,内分泌療法に反応しない再燃癌やその他の癌に対するketo.の有効性が示唆された.
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