日本薬理学雑誌
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98 巻, 4 号
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  • 緒方 宣邦, 楯林 英晴
    1991 年 98 巻 4 号 p. 245-250
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    A method is described for the primary culture of neurons from adult mammaliam brain. The primary culture consists of five processes: 1) preparation of brain slices, 2) microdissection of the discrete area, 3) enzymatic treatment of the tissue, 4) dissociation of cells by mechanical agitation of the tissue fragments, and 5) plating and feeding of dissociated cells. The cells could be maintained in culture for more than several weeks. Whereas neurons freshly dissociated from the adult brain do not respond to exogenously applied neurotransmitter substances, probably due to destruction of receptors by the enzymatic treatment, the neurons regained the ability to respond to a variety of neurotransmitters when they were cultured. Cultured neurons from adult mammalian brain are proving to be an excellent model for physiological as well as pharmacological investigations on the central nervous system.
  • 増田 義勝, 村井 繁夫, 吉田 煕, 斎藤 弘子, 阿部 英一, 村上 秀元, 伊藤 忠信
    1991 年 98 巻 4 号 p. 251-257
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    マウスを用いた多重迷路実験法を考案した.装置は,迷路が置かれた迷路ケージ,ホームケージ,およびスタートボックスよりなり,ホームケージは暗箱とした.迷路は3つの選択肢をもつユニットが4個からなる多重迷路とした.迷路の入口はスタートボックスと,迷路の出ロはホ―ムケージと,それぞれ連絡しており,餌はホームケージ内に,水は迷路の入ロ部に置かれた.本装置内で9匹のマウスを午前10時から午後8時まで飼育した後,別のケージに移し翌日の午前9時まで絶食とした.試行は1日1回午前9時から10時までの間に行われた.スタートボックスに置かれたマウスがホームケージに到達するまでの時間(RT)とその間のエラーの回数(誤選択肢に入った回数)を測定し1試行とした.計6回の試行を行った.マウスは2試行目で迷路を習得した(平均エラー数0.9回,平均RT20秒).装置を180度回転して行った4回目の試行ではエラー数,RTともに有意にふえた.迷路の正しい選択肢を変更して行った6回目の試行では,さらに著しいエラー数とRTの増大が生じた.迷路を習得したマウスに塩酸scopolamine(0.125~0.5mg/kg)を投与し,30分後に試行を行った.scopolamineは用量依存的にエラ―数とRTを増大させた.6時間後の試行ではscopolamineの効果は消滅した.scopolamine(0.25mg/k9)が1群には装置内で飼育される直前に,1群には装置内で飼育された直後に投与された.装置内での飼育時間は4時間としその後翌日の試行まで絶食とした.scopolamineは直前投与,直後投与ともにマウスの迷路学習を妨げた.以上の結果は迷路のある環境で飼育されたマウスは自然に迷路を学習すること,およびscopolamineが学習能力,記憶の固定および記憶の再生のいずれの段階をも障害することを示唆した.
  • 川崎 博己, 高崎 浩一朗
    1991 年 98 巻 4 号 p. 259-272
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    新規非ベンゾジアゼピン系抗不安薬であるSC-48274の脳波作用を慢性電極植え込み無麻酔ウサギを用いてbllspironeおよびdiazepamと比較した.SC-48274(10~30mg/kg,i.v.)投与により自発脳波は皮質および扁桃体では高電圧徐波,海馬ではθ波の脱同期化が起こり傾眠パタ―ン化した.diazepam(2~3mg/kg,i.v.)でも自発脳波は傾眠パタ―ンとなったが,SC-48274に比較して強かった.buspirone(0.5mg/kg,i.v.)では,皮質および扁桃体の脳波は低電圧速波となり覚醒波が持続し,海馬では海馬θ波の電圧低下とその同期波が持続した.自発脳波のパワースペクトル解析では,SC-48274投与後,皮質では低周波成分(1~2Hz)の増加と海馬θ波のピークパワーの低下がみられたが,θ波のピーク周波数の移動はみられなかった.diazepamでは皮質脳波の低周波成分の著明な増加,海馬θ波のピークパワーの低下と周波数の低周波側への移動が観察された.buspironeでは海馬θ波のピークパワーは投与初期に低下し,その後は増大したが,周波数の移動はみられなかった.SC-48274とdiazepam投与後ウサギは行動上鎮静状態を示したが,buspirone後では興奮状態がみられた.SC-48274およびbusphoneは音刺激あるいは中脳網様体および視床下部後部電気刺激による脳波覚醒反応に影響を与えなかったが,diazepamはいずれの刺激による反応も抑制した.光誘起反応はSC-48274とbuspironeによって影響されなかったが,diazepamはこの反応を抑制した.SC-48274,bu8pirone,diazepamのいずれも視床内側中心核電気刺激による漸増反応に著明な影響を与えなかった.海馬電気刺激による後発射はSC-48274(20mg/kg)投与で持続の軽度抑制,diazepamでは著明に抑制され,buspironeでは軽度増強された.以上,SC-48274はdiazepamやbusphoneとは質的に異なった脳波作用を示し,しかも,脳波作用が少ない抗不安薬と考えられる.
  • 江頭 亨, 須藤 慎治, 村山 文枝, 河野 俊郎, 工藤 欣邦, 後藤 信一郎, 高山 房子, 山中 康光
    1991 年 98 巻 4 号 p. 273-281
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    老齢ラット脳に対する加味帰脾湯の効果を,コリン作動性神経マーカーであるムスカリン受容体,acetylcholinesterase(AChE),chohne acetyltransferase(CAT)およびコリン取り込みについて検討した.加味帰脾湯200mg/kgをSprague-Dawley系雄性ラット(24カ月令)に4週間連続経ロ投与した.脳を前脳+大脳皮質部(CR)および間脳部(SS)に分割し,それぞれ粗膜標品および粗シナプトソームを調整し,種々受容体および酵素活性を測定した.ムスカリン受容体は加味帰脾湯投与のCR部で,対照老齢ラットに比べ有意な結合量の増加が見られたが,これはBmax値の増加,すなわちムスカりン受容体数の増加であった.加味帰脾湯4週間連続経ロ投与にもかかわらず,いずれの部位においても,AChE活性およびコリン取り込み能は対照老齢ラットの値と同程度であった.一方,CAT活性において,加味帰脾湯4週間連続経ロ投与で対照老齢ラットにくらべ,CR部において有意なVmax値の増加がみられた.これらの結果から,加味帰脾湯は低下した老齢ラットのコリン作動性神経系を賦活させる作用を持つ可能性が考えられる.
  • 増渕 美子, 渡辺 実, 熊井 俊夫, 田中 政巳, 赤池 真理, 平井 正直
    1991 年 98 巻 4 号 p. 283-292
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    これまでに前立腺癌に対する去勢とestrogen併用療法による予後増悪のメカニズム及び顎下腺摘出による癌発育抑制について報告したが,去勢により癌発育が有意抑制されなかった一因として副腎由来androgenの増加を示した.抗真菌薬として使用されるimidazole誘導体のketoconazole(keto.)は,睾丸や副腎でandrogen合成の抑制が報告された.今回は,実験的前立腺由来移植癌を用い,去勢し,睾丸由来androgenの影響を除去し,更にketo.投与を併用して,副腎でのandrogen合成も抑制した環境下で,癌発育成長を観察し,steroidogenesisを検討した.全換気式空調下で飼育した40日齢のDonryu系雄ラットに前立腺由来移植癌(prostatic squamous cell carcinoma P-770511の286代目)を前立腺前葉内に移植し,その8日後に去勢及びketo.の投与を開始し,移植28日後に断頭した.keto.は,5又は10mg/ratの用量を20日間毎日一回背部皮下に投与した.移植癌の発育成長は,keto.投与で抑制されたが,去勢のみでは有意な抑制はなく,keto.との併用で有意抑制された.移植によって低下したandrogenは,keto.投与によって増加した.無傷群(lntact)にketo.投与で,血漿及び副腎内corticosteroneは有意低値を示し,一方,血漿及び睾丸androgenは低値傾向を示したが有意差はなかった.移植時に去勢すると,血漿中androgenは低下したが,副腎△4-androstenedione(△4-A)は高値を示した.移植・去勢時にketo.投与で血漿中androgenは高値を示し,副腎△4-Aも高値を示した.これらの事から,keto.は,androgenレベルを低下せずに癌の発育を抑制することが明らかとなった.又,内分泌療法に反応しない再燃癌やその他の癌に対するketo.の有効性が示唆された.
  • 稲葉 賢一, 森本 保人, 福田 武美, 瀬戸口 通英
    1991 年 98 巻 4 号 p. 293-299
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    新規dihydrobenzoxazine carboxamide誘導体,Y-25130(N-(1-azabicyclo〔2,z,2〕oct-3-yl)-6-chloro-4-methyl-3-oxo-3,4-dihydro-2H-1,4-benzoxazine-8-carboxamide hydro-chloride)の5-HT3受容体遮断作用を,urethane麻酔ラットを用いて,serotonin(5-HT)のbolus静脈内投与により惹起される反射性の徐脈(von Bezold-Jarisch effect:BJE)に対する拮抗作用を指標に検討した.BJE反応に対し,spiperone(5-HT1受容体遮断薬),ketanserin(5-HT2受容体遮断薬),phenoxybenzamine(ノルアドレナリンα1受容体遮断薬),yohimbine(ノルアドレナリンα2受容体遮断薬)およびhaloperidol(ドーパミンD2受容体遮断薬)はいずれも影響を及ぼさなかった.一方,Y-25130は静脈内および十二指腸内のいずれの投与経路においても,対照薬のmetoclopramideよりも強力で,持続性のある抗BJE作用を示した.また,Y-25130は選択的な5-HT3受容体アゴニストである2-metllyl-5-HTにより惹起されるBJE反応を抑制したが,BJE反応を抑制する約800倍の用量を用いても,迷走神経の電気刺激による心拍数の減少に対して全く抑制作用を示さなかった.以上の結果より,Y-25130は強力で選択的な5-HT3受容体遮断作用を有することが示された.
  • 杉山 隆之, 夏賀 徹
    1991 年 98 巻 4 号 p. 301-310
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    低分子量ヘパリン(LHG)の血液凝固系,出血時間,脂質系,血小板凝集及び骨代謝に及ぼす影響を,ヘパリンナトリウム(ヘパリン)と比較した.in vitroにおいてLHGは,イヌ血漿の活性部分トロンボプラスチン時間(APTT),プロトロンビン時間(PT)及びトロンビン時間(TT)を延長させたが,それらの延長はヘパリンに比して有意に軽度であり,LHG8μg/mlとヘパリン2μg/mlによる延長はほぼ同等であった.ラットにL,HGを静脈内投与したときのAPTTの延長は,ヘパリン投与時に比して有意に軽度であった.LHGはトロンビン静注致死ラットモデルの死亡率を低下させたが,その作用はヘパリンに比して有意に弱く,LHGの効果は1/4の用量のヘパリンとほぼ同等であった.さらに,LHGによるラット尾動脈出血時間の延長は,ヘパリンに比して有意に軽度であり,LHGの影響は1/4の用量のヘパリンとほぼ同等であった.これらのことから,出血時間の延長は主として抗トロンビン作用によるものであり,LHGはヘパリンに比して抗トロンビン作用が弱く,出血を助長させにくいと考えられた.ヘパリンはリポプロテインリパーゼを活性化し,トリグリセライドの減少及び遊離脂肪酸の増加をひき起こした.LHGの影響はヘパリンに比して軽度であったが,高用量を用いるとヘパリンと同様に強い影響を及ぼした.ヘパリンは,血小板のADP凝集を増強したが,LHGはほとんど影響しなかった.LHG及びヘパリンの骨吸収に及ぼす直接作用及び骨形成に及ぼす作用は認められなかった.LHGの抗凝固効果は同重量のヘパリンとほぼ同等であることが明らかにされていることから,LHGでは従来のヘパリンで報告されている副作用に関連する薬理作用の発現はヘパリンに比して軽度であり,より安全性の高い抗凝固薬であると考えられた.
  • 栗原 久, 田所 作太郎
    1991 年 98 巻 4 号 p. 311-317
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    febarbamate(MS-543);1-(3-butoxy-2-carbamoyloxypropyl)-5-etllyl-5-phellyl(1H,3H,5H)-pyrimidine-2,4,6-trioneの行動薬理作用を,マウスの移所運動,シャトル型非連続回避反応およびステップスルー型受動的回避反応を指標に検討した.MS-543(100および1000mg/kg,P.o.)は単独投与時に移所運動に影響せず,またmethamphetamine(2m8/k8,s.c.),apomorphine(0.5mg/kg,s.c.)およびscopolamine(0.5mg/kg,s.c.)と併用投与しても,それぞれの移所運動促進効果に影響を及ぼさなかった.十分な訓練によって確立したシャトル型非連続回避反応はMS-543(100および1000mg/kg)によって変化しなかった.しかし,MS-543(1000mg/kg)は,chlorpromazine(2mg/kg,s.c.)による反応率および回避率の低下を増強する傾向があり,physostigmine(0.2mg/kg,s.c.)による回避率の低下を軽度ではあるが有意に増強した。1試行による受動的回避反応の獲得訓練前にscopolamine(0.5mg/kg,s.c.)を投与することによって生じた再生試行時の成績悪化は,MS-543(100および1000mg/kg)をscopolamine投与に先行して処置した際には軽減されたが,訓練後の処置は無効であった.さらに,反復訓練を実施した際には,MS-543は受動的回避反応に著しい影響を及ぼさなかった.本実験結果は,MS-543は軽度の鎮静作用と,コリン作動神経系に対する鷺活作用を有することを示唆している.
  • 末永 敏彰, 白川 敏夫, 原田 修江, 峠 千衣, 山崎 正志, 小松 弘尚, 松本 能里, 木田 実, 川本 雄二, 村上 祥子, 中村 ...
    1991 年 98 巻 4 号 p. 319-325
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    黄連解毒湯と三黄瀉心湯の胃粘膜保護作用の発現機序を,taurocholate処置後,酸性試験液の胃内留置により起こるラットの胃粘膜障害モデルを用いて検討した.これらの薬剤は用量依存性に胃粘膜障害を抑制し,この酸性試験液の胃内留置の間に起こる水素イオンおよびナトリウムイオン流量の増大を用量依存性に抑制した.三黄瀉心湯は胃粘膜により,14Cでラベルされたarachidonateから合成される各種prostaglandinの総量を有意に増加させた.以上の成績より,黄連解毒湯と三黄瀉心湯は胃粘膜関門を強化することにより胃粘膜保護作用を発揮することが示唆された.さらに三黄瀉心湯のこの作用は胃粘膜のprostaglandin合成能増加に基づくと推定された.
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