日本薬理学雑誌
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アレルギー性疾患治療薬Tranilastのケロイド組織に対する作用
須澤 東夫菊池 伸次市川 潔荒井 伸彦田澤 滋樹土屋 興巨百瀬 泰紀柴田 信男杉本 智透浜野 修一郎小松 英忠宮田 廣志
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1992 年 99 巻 4 号 p. 231-239

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抄録

アレルギー性疾患治療薬,tranilastのヌ―ドマウスへ移植したヒトケロイド組織に対する効果を検討し,また,培養ケロイド由来線維芽細胞の細胞外マトリックス成分と細胞増殖に対する作用についても併せて検討した.ヒトケロイド組織移植モデルにおいて,tranilast(50~200mg/kg,p.o.)はケロイド組織重量を減少し,その効果はtriamcinolone(25mg/kg,p.o.)とほぼ同程度であった.また,tranilastの200mg/kg,p.o.は組織中ヒドロキシプロリン量を減少した.ケロイド由来線維芽細胞培養系においてもtranilast(3~300μM)はコラーゲン合成を抑制し,増殖能およびゲリコサミノグリカン合成に対しては300μMの高用量で抑制した.しかし,フィプロネクチン産生に対しては明らかな作用は認められなかった.一方,triamcinolone(10μM)は増殖能およびゲリコサミノグリカン合成も抑制した.以上のように,tran皿astのケロイド組繊重量抑制作用には,ケロイド由来線維芽細胞におけるコラ―ゲン合成抑制作用が関与することを示唆し,本剤がケロイドの治療に有用であることが考えられる.

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