日本薬理学雑誌
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99 巻, 4 号
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  • 森井 成人, 成宮 周
    1992 年 99 巻 4 号 p. 191-203
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    The ras oncogene products (ras p2ls) are 21-KDa proteins with activities of GTP binding and hydrolysis. A number of proteins homologous to ras p21 have been discovered and collectively named small molecular weight GTP-binding proteins. These proteins undergo post-translational modification with isoprenoid residues attached to cysteine in their carboxyl terminal. With this modification, they attach to cellular membranes. The biochemical activities of these proteins, i.e., GTP hydrolysis and binding, are regulated by various regulatory factors such as GDP-GTP exchange proteins and GTP-aseactivating proteins, but little is known about the cellular functions and physiological pathways through which they regulate these functions. Botulinum C3 ADP-ribosyltransferase, a 23-KDa exoenzyme secreted from certain strains of types C and D Clostridium botulinum, specifically ADP-ribosylates the rho family of these GTP-binding proteins. This ADP-ribosylation occurs at a specific asparagine residue in their putative effector domain, and presumably interferes with their interaction with a putative effector molecule downstream in signal transduction. C3 exoenzyme, when incubated with or microinjected into cultured cells, ADP-ribosylates a rho gene product in the cells, and causes profound cell rounding with loss of adhesion plaques and collapse of stress fiber. Microinjection of an activated mutant of rho A protein, on the contrary, induced extensive adhesion and actin assembly in cultured cells. These results suggest that the rho family of proteins are involved in morphogenesis and motility of cells via assembly and disassembly of cytoskeletal systems, and botulinum ADP-ribosyltransferase is a useful tool for clarifying the molecular mechanism of these processes.
  • 升永 博明, 高比良 玲子, 高坂 和弘, 沢井 忠則
    1992 年 99 巻 4 号 p. 205-211
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    部分腎切除によるrecombinant human erythropoietin(SNB-5001)の血漿中濃度推移の変化と造血作用の関係を検討した.血漿中のSNB-5001濃度は2 step enzyme immunoassayにより測定した.部分腎切除ラットに50U/kgのSNB-5001を静脈内投与したところ,無処置ラットと同様に2相性に減衰したが,無処置ラットより高い濃度で推移し,血漿中濃度対時間曲線下面積も有意に増加した.また,生物学的半減期の延長および全身クリアランスの低下が認められた.分布容積は無処置ラットとほぼ同じであった.部分腎切除によりSNB-5001の消失が遅延したことから,SNB-5001の代謝あるいは排泄に腎の何らかの関与が示唆された.5,50および500U/kgのSNB-5001を7日間繰り返し静脈内投与すると,部分腎切除ラットおよび無処置ラットのどちらにおいても,用量依存的な網状赤血球数,赤血球数,ヘモゲロビンおよびヘマトクリットの増加が認められた。これらの血液学的指標について,投与直前と投与終了翌日の測定値の差をSNB-5001による造血反応とし,部分腎切除ラットと無処置ラットを比較した.部分腎切除ラットでは明らかに無処置ラットより強い造血反応を示した.以上の結果から,部分腎切除により作製した腎性貧血モデルの慢性尿毒症状態は,SNB-5001の作用を阻害せず,むしろ部分腎切除がSNB-5001の消失時間を遅延させることにより薬理作用を増強させる可能性が示唆された.
  • 升永 博明, 高比良 玲子, 平林 真澄, 沢井 忠則
    1992 年 99 巻 4 号 p. 213-229
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    SNB-5001の健常動物,貧血動物に対する造血作用について種々の検討を行った.マウスに1~8U/匹の用量範囲で3日間皮下投与すると,直線的な網状赤血球数の増加が認められた,ラット,ウサギ,イヌに週2回3週間皮下投与すると,いずれにおいても50U/kg以上で用量依存性の造血尤進作用が認められた.SN:B・5001を投与されたラット,イヌにおいて,増加した網状赤血球数はいずれも投与終了後1週間以内に低下したが,赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値はラットで約2週間,イヌで約3週間高い値を持続した.SNB-5001の過剰投与による急激な多血状態が循環動態に与える影響について自然発症高血圧ラットおよび健常ラットを用い検討したところ,いずれのラットにおいても循環血液量および循環赤血球量の増加が認められたが,血圧および心拍数に対する明らかな影響は認められなかった.貧血改善効果の検討は腎性貧血,出血性貧血,炎症性貧血の各実験モデルについて行った.腎性貧血ラットでは7日間繰り返し投与,週1回3週間間歌投与のいずれにおいても用量に依存した貧血改善作用が認められた.また大量濡血後の貧血ラットでは,SNB-5001の投与により貧血からの回復時間が用量依存的に短縮し,少量ずつの濡血を繰り返したラットでは50U/kgの投与量で明らかに貧血の進行を抑制した.また慢性炎症ラットに併発した貧血に対しても明らかな改善作用を示した.これらのことから,SNB-5001は赤芽球系前駆細胞の分化促進を誘導し,腎性貧血のみならず,出血や慢性炎症にともなう貧血に対しても有用であることが示唆された.慢性炎症ラットに併発した貧血において,赤血球数の増加に比べ,ヘモグロビン濃度およびヘマトクリット値の増加の程度が小さかったが,これは炎症時の鉄代謝障害により,赤血球のヘモグロビン合成に動員される鉄の供給が不足し,低色素小球性の赤血球が産生されたためと推察された.
  • 須澤 東夫, 菊池 伸次, 市川 潔, 荒井 伸彦, 田澤 滋樹, 土屋 興巨, 百瀬 泰紀, 柴田 信男, 杉本 智透, 浜野 修一郎, ...
    1992 年 99 巻 4 号 p. 231-239
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    アレルギー性疾患治療薬,tranilastのヌ―ドマウスへ移植したヒトケロイド組織に対する効果を検討し,また,培養ケロイド由来線維芽細胞の細胞外マトリックス成分と細胞増殖に対する作用についても併せて検討した.ヒトケロイド組織移植モデルにおいて,tranilast(50~200mg/kg,p.o.)はケロイド組織重量を減少し,その効果はtriamcinolone(25mg/kg,p.o.)とほぼ同程度であった.また,tranilastの200mg/kg,p.o.は組織中ヒドロキシプロリン量を減少した.ケロイド由来線維芽細胞培養系においてもtranilast(3~300μM)はコラーゲン合成を抑制し,増殖能およびゲリコサミノグリカン合成に対しては300μMの高用量で抑制した.しかし,フィプロネクチン産生に対しては明らかな作用は認められなかった.一方,triamcinolone(10μM)は増殖能およびゲリコサミノグリカン合成も抑制した.以上のように,tran皿astのケロイド組繊重量抑制作用には,ケロイド由来線維芽細胞におけるコラ―ゲン合成抑制作用が関与することを示唆し,本剤がケロイドの治療に有用であることが考えられる.
  • 須澤 東夫, 市川 潔, 菊池 伸次, 山田 幸一郎, 土屋 興巨, 浜野 修一郎, 小松 英忠, 宮田 廣志
    1992 年 99 巻 4 号 p. 241-246
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    ラットのカラゲニン誘発肉芽形成モデルおよび血管透過性尤進モデルに対するtranilastの作用を検討した.カラゲニン誘発肉芽形成モデルにおいてtranilast(50または100~200mg/kg,p.o.)は用量依存的に,有意に肉芽組織重量およびヒドロキシプロリン量を減少した.tranilast(50~200mg/kg,p.o.)はラットの背部皮膚欠損の創傷治癒日数を遅延しなかった.triamcinolone(10mg/kg,p.o.)はカラゲニン肉芽形成を著明に抑制した.tranilast(50~400mg/kg)はCaionophore A23187,bradykininおよびxanthine oxidase誘発血管透過性充進による色素浸出を用量依存的に減少した.さらに,tmnilast(30および300μM)はヒト好中球のFMLPによる活性酸素産生を抑制したが,活性酸素捕捉作用は示さなかった.肥厚性疲痕およびケロイドは線維芽細胞の異常増殖およびコラーゲンの過剰蓄積による肉芽形成とともに癌痒,疹痛を伴う疾患であることから,tranilastは肥厚性廠痕およびケロイドに対しても有用な薬剤と考えられる.
  • 林 潤一, 佐藤 恭子, 秋本 孝行, 佐藤 秀昭, 秦 葭哉
    1992 年 99 巻 4 号 p. 247-254
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    酸素依存度の高い脳神経系を保護することで低酸素負荷による致死が遅延されることが指摘されながら,延命効果を客観的に評価できる指標の検討は充分なされていない.今回,血圧・呼吸・心電図・脳波の各生存徴候の同時連続的観察を行うことにより,低酸素性障害(致死)の評価には血圧を指標とした生存時間を用いることが客観性に優れていると考えられた.この指標を用いて,脳循環改善薬であるnaftidrofuryl oxalateの低酸素性致死に対する延命作用を検討した.naftidrofuryl oxalate 10mg/kgの腹腔内前投与は対照に比べ生存時間を48%有意に延長した.脳神経機能改善薬のidebellone 10mg/kgおよびnicergoline 10mg/kgには対照と比べ低酸素下生存時間に有意差を認めず,bifemelane hydrochloride 10mg/kgには43%の有意の延長を認めた.naftidrofuryl oxalate 25mg/kgとbifemelane hydrochloride25mg/kgとの併用は各々の単独より生存時間を15%あるいは19%延長した.以上の結果は,低酸素性致死に対しnaftidrofuryl oxalateには代表的な脳代謝賦括薬のbifemelane hydrochlorideと同等の低酸素障害防止効果が期待できること,脳循環改善作用に加え生存に関わるエネルギー代謝保護効果も有する可能性があることを示唆している.
  • 清木 雅雄, 会田 浩幸, 米良 幸典, 新井 金保, 外山 誠司, 古田 盛, 森田 仁, 堀 裕子, 米田 智幸, 田頭 栄治郎
    1992 年 99 巻 4 号 p. 255-263
    発行日: 1992年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    Z-103のラット酢酸潰瘍モデルに対する胃粘膜付着性について,肉眼的,組織学的,並びに生化学的に検討し,その結果をZ-103の類縁物質であるZnSO4およびZnSO4とL-carnosineの配合剤と比較した.その結果,Z-103は酢酸潰瘍に経ロ投与した場合,絶食および食後のいずれの条件下においても正常粘膜および潰瘍部位に付着することが判明した.また絶食条件下でその付着強度並びに付着時間は用量依存的に増加することが確認され,特にZ-103,100mg/kgの投与では正常部位で6時間,潰瘍部位で24時間まで付着することが認められた.また組織学的観察により,正常組織では被蓋上皮細胞層から胃粘膜固有層内に至るまで,また潰瘍部位では潰瘍最表層部並びに肉芽組織においてZnの局在が認められた.さらに胃組織中Zn含量の測定を行ったところ100mg/kgの用量において,正常部位では6時間まで潰瘍部位では24時間まで有意にZn含量は増加していた.このことより,Z-103は潰瘍部位に対して高い親和性を有する可能性が考えられた.一方,Z-103類縁物質は肉眼的観察においてZ-103とほぼ同等の付着性を示したが,Z-103とZnSO4投与の胃組織中Zn含量について比較したところ,正常部位および潰瘍部位ともZnSO4のほうがZ-103に比べZn含量は少なかった.このことより,Z-103という形態をとった方が胃粘膜に対する付着性は優れているものと思われた.以上まとめると,Z-103は酢酸潰瘍ラットに対して長期にわたり付着浸透作用を示し,特に潰瘍部に対して高い親和性を有するものと思われる,よって本薬剤は潰瘍上層部に被覆層を形成することにより粘膜保護作用を示す可能性が考えられ,また同時に胃粘膜浸透性を示すことより局所的に種々薬理作用を発現している可能性が推定された.
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