抄録
動画像圧縮手法において, 変換後の係数を増加させずに一部の係数にエネルギーを集中させる目的で, 直交変換が主に利用されている. 大きなエネルギーを持つ変換係数を保存することが, 動画像圧縮の主たる技法である. 直交変換の特徴としては, 基底の数が少ないことが挙げられ, このために変換がシフト不変性を持たず, 圧縮後に輪郭が消失するなどの問題が発生する. これに対して, 基底の数を増加させた冗長変換を利用することにより輪郭をうまく表現することが可能になるが, 変換係数を削減することが主眼である圧縮という観点から見れば冗長変換は効率的ではなく, 圧縮には不向きであると考えられてきた. 近年, 変換後の係数を射影を用いて削減するIterative Projection-Based Noise Shapingが開発され, 静止画像圧縮の手法として提案された. 筆者らは冗長変換を動画像圧縮に用いる有効性について論じる.