抄録
本研究は,グループ形成に関するエージェントシミュレーションにおいて認知的経済性を考慮したモデルを提案しシミュレートしたものである.
人間社会のグループ形成についての研究としては、3エージェント間の関係性を肯定的(+1)否定的(-1)で定義し,3者のなすサイクルの関係性の積でグループの均衡・不均衡を判断したハイダーの認知的均衡理論や,それらをN者間の関係性まで拡張したカートライトらの研究などがある.しかし,ハイダーやカートライトらの研究では,関係性の評価値が肯定的(+1)否定的(-1)関係なし(0)などと離散値に限定されていた.そこで本研究では,様々な関係性の評価を可能とするため、認知的経済性という視点からエージェント間の関係性を行列にまとめ,その固有値の大小で均衡・不均衡を判断するモデルを提案する.さらに,エージェント間の情報交換に制約を加える事によって創発されるグループについて考察する.