抄録
鉄道において，車輪とレール間に発生する接線力は，車輪とレール間に発生する車両のブレーキ性能を大きく左右させる力である．接線力は走行時に考慮すべき大きな要因であるものの，実際の車両におけるブレーキの制御において定量的な利用はあまり行われていない．それは，接線力が天候やレールの状態など様々な要因で変動する計測が困難な値のためである． これまでに接線力推定の手法として，ファジィ推論を用いた推定方法を提案した．この提案では,モデルベースによる推定に比べファジィ推論を用いた推定の方が比較的良好な結果を示すことがわかった．しかし，この提案は走行する車両上もしくはそれを模擬する環境下でのリアルタイムな推定や真値に対する推定値の定量的な評価が行われていない． そこで本報告では,ファジィ推論を用いた推定手法を用い，車両を模擬したシミュレーション上においてリアルタイムでの接線力の推定を行う．また，推定接線力の精度の定量的評価と利用法についても検討する．
