主催: 日本知能情報ファジィ学会
会議名: 第34回ファジィシステムシンポジウム
回次: 34
開催地: 名古屋大学
開催日: 2018/09/03 - 2018/09/05
本論文は地球磁気圏擾乱 (AL指数変動)を引き起こす最も大きな要因となる太陽風物理パラメータ (磁場及びプラズマ物理諸量) を知的情報処理手法を用いて抽出することを試みたものである。地球は太陽を起源とする高速の荷電粒子 (プラズマ) 流である,所謂“太陽風”に常に晒されており、太陽風からは磁気圏に擾乱がもたらされている。大規模な磁気圏擾乱は地上の電子機器類に様々な類の問題を引き起こす。どの太陽風パラメータあるいはそれらの変動が深刻な地球磁気圏擾乱を引き起こすのかを特定することは重要な課題である。深刻な磁気擾乱を引き起こす太陽風パラメータを抽出するために、我々は「入力ニューロンの潜在性」を考慮に入れたニューラルネットワーク (潜在学習) を用いることにした。また、本論文においては、2017年9月8日に発生した磁気擾乱時に衛星で観測された太陽風パラメータを解析対象とした。太陽風物理量を用いて、先ず、我々は地球磁気圏擾乱の予測モデルを作成した。この予測モデルは実測値と予測値の相関係数で評価され、汎化能力0.8195のモデルが作成できた。このモデルを解釈したところ、我々は「太陽風動圧」という太陽風パラメータを抽出することに成功した。今回取り上げた磁気擾乱を説明するためには「磁気圏収縮」というプロセスが重要な役割を果たしていることが考えられている。したがって「太陽風動圧」は今回観測された太陽風パラメータの中で磁気擾乱を引き起こす主な原因となっている1つであると考えられる。よって、この重要パラメータの抽出に成功した潜在学習はどのような太陽風パラメータが地球磁気圏擾乱を引き起こすのかを評価するのための重要且つ利便性の高い手法であると言える。