日本顎関節学会雑誌
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開口制限を認める顎関節症患者に対するJog-manipulation techniqueの即時的効果
後藤 基誉永田 和裕堺 基至菅原 佳広渥美 陽二郎白野 美和外山 三智雄
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2009 年 21 巻 2 号 p. 129-137

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抄録

マニピュレーションテクニック(MAT)は,非侵襲的で安価な治療法として,開口制限を有する顎関節症患者の治療に使用されているが,その有効性や最も効果的な方法は明らかではない。この研究の目的は,複数のMATを組み合わせたJog-manipulation technique(J-MAT)の効果を明らかにすることであり,J-MAT施術前後の顎運動の定量的な評価を行った。被験者として,日本歯科大学新潟病院あごの関節外来を受診し,開口量が35mm以下で,自由意志に基づいて研究への参加を承諾した17人の顎関節症患者を選択した。閉口型,側方型,開口型の3種類のMATを組み合わせたJ-MATを患者に施術し,さらに繰り返しの効果を明らかにするため,数回のJ-MATを追加した。顎運動の記録にはWinJaw®システムを使用し,切歯点と顆頭点の評価を行った。計測はMATの各ステップで行い,測定値は統計学的に比較した。施術前の平均開口距離は21.6±6.5mm,術後は33.3±6.4mmで統計的に有意に増加した(p<0.01)。顆頭運動の平均増加量は,閉口型が1.8±2.7mm,側方型が1.1±1.1mm,開口型が1.4±1.4mm,また繰り返しの効果が1.0±1.4mmであった。最終的な顆頭運動量の増加量は5.3±3.5mmであり,術前より有意に増加した(p<0.01)。しかしながら各ステップ間では有意差を認めず,特定のMATが他のステップより優れていることは確認できなかった。これらより,複数のMATを組み合わせたJ-MATを繰り返し適用することで,顎関節症患者の顎運動が改善することが示された。

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© 2009 一般社団法人 日本顎関節学会
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