抄録
転位関節円板の重度骨化を認めた変形性顎関節症の1例を報告する。61歳女性が開口障害を訴えて受診した。5年前に顎関節の痛みと開口障害を認め,近在歯科を受診した。歯科医院ではスタビライゼーションスプリントを4年間装着した。疼痛は軽減したが,開口障害は変わらず当科紹介となった。開口度は切歯間距離では23 mmであった。パノラマX線画像やCT画像において,左側顎関節周囲に広範囲な帯状の石灰化物と下顎頭の肥大が認められた。全身麻酔下に関節円板切除術と下顎頭切除を行った。組織学的に関節円板の骨化と関節包の石灰化物を認めた。術後に開口度は35 mmまで改善した。大きな顔貌の変化や顔面神経麻痺は認めなかった。術後2年6か月で開口度は35 mmを維持し,顎機能も良好である。