日本顎関節学会雑誌
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症例報告
鼓室骨裂孔の1例
玉井 和樹杉崎 正志伊介 昭弘高山 岳志来間 恵里林 勝彦
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2015 年 27 巻 3 号 p. 207-211

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抄録
外耳道は,骨部と軟骨部に分かれており,まれに発育異常として骨部(鼓室骨)に鼓室骨裂孔(Huschke孔)がみられる。しかしながら,歯科臨床においてこれに遭遇する機会は非常に少ない。今回,われわれは,開口障害および顎関節痛を訴えた患者に鼓室骨裂孔を認めた1例を経験したので報告した。患者は,66歳女性,開口障害と顎関節痛を主訴に2009年12月に当科来院。1年前に自分の声が響くことを主訴として当院耳鼻科を受診,外耳道への顎関節円板後部組織の陥入を認め,開閉口時に伴ってその陥入程度に変化がみられることが指摘され,紹介来科した。初診時無痛開口量は22 mm,有痛開口量は30 mmで,パノラマX線写真では,右側に変形性顎関節症が疑われた。CT画像では右外耳道前壁に直径約5.5 mmの骨欠損を認め,関節円板後部組織の外耳道への陥入を認めた。以上より,鼓室骨裂孔および顎関節症と診断した。なお,主訴の開口障害と鼓室骨裂孔との関連性は認められなかった。現在無痛開口量は35 mmであり,開口練習を行いながら経過観察中である。
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© 2015 一般社団法人 日本顎関節学会
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