2021 年 33 巻 2 号 p. 31-36
現代は,標準化された治療を適時に行うことが強く要求される時代である。したがって,日常臨床において顎関節症患者が来院した際に,どのような診察を行って適切な診断を下すかについては,豊富な知識と十分なスキルが必要である。
顎関節症の初期治療にアプライアンスが用いられること,なかでもスタビリゼーションアプライアンスが広く応用されている現状は,一般によく知られていることと思われる。しかしながら,アプライアンスの製作法や調整法の実際に関しては,専門のトレーニングを受けた者以外には,あまり知られていないのが現状と思われる。
スタビリゼーションアプライアンスには長い歴史があり,外形や調整法などでさまざまなバリエーションが生み出されてきた。いずれも,その根底にある概念は近接しているが,それぞれに微妙に差異があるのも事実である。
また,日常臨床では,アプライアンスの装着や調整に長いチェアタイムが必要となることが少なくない。チェアタイムを短縮するためには,正確な印象採得と咬合採得が必要であることはもちろんであるが,アプライアンスの適切な調整も重要である。
そこで今回,アプライアンス療法の初学者がスタビリゼーションアプライアンス療法を日常臨床に活用していただくことを主眼に,その製作法,使用法,調整法から技工の要点といった基本事項について,ポイントを押さえながら解説する。