2023 年 35 巻 2 号 p. 83-92
研究目的:ブラキシズムにおける臨床的評価の妥当性を検討するために,臨床的なブラキシズム評価と定量的評価との間で相関解析を行うとともに,臨床的評価と定量的評価において,睡眠時と覚醒時ブラキシズムの比較を行った。
方法:日本歯科大学新潟病院の研修医,病院実習生のなかからブラキシズム検査の同意の得られた32名(自覚的ブラキサー23名,自覚的非ブラキサー9名)を選択した。
ブラキシズムの臨床的な評価では,①問診 ②臨床徴候 ③被験者の行動記録を使用し,定量的な評価ではシングルチャンネルポータブル筋電計(Sunstar,GrindCareⓇ)を使用した。臨床的な診査の妥当性を評価するため臨床的な評価と定量的な評価の相関解析を行うとともに,睡眠時と覚醒時のブラキシズムの比較では,ウィルコクソンの符号順位検定を行った。
結果:睡眠時ブラキシズムでは,臨床徴候が定量的な評価に対して中程度の相関を示したが,ほかの診査は低い相関を示した。覚醒時のブラキシズムでは,いずれの診査も定量的な評価に対して低い相関を示した。
臨床的および定量的評価における睡眠時と覚醒時のブラキシズムの比較では,問診では覚醒時の訴えが有意に多いのに対して,行動記録と定量的な評価では有意差を認めなかった。
結論:定量的な評価に対して,高い相関を認める臨床的な評価法は確認されず,特に覚醒時のブラキシズムの相関は低いことが示された。全体的にみると臨床的な評価の妥当性は低いため,正確なブラキシズムの評価を行うためには筋電図などを用いた定量的な評価が不可欠と判断された。