本研究では、わが国の水銀の乾性沈着フラックスに対する大気中の粒子状およびガス状水銀(reactive gaseous mercury, RGM)の寄与率を評価した。これには、2004年4月~2006年3月の間に全国の10地点で観測された水銀および他の微量元素(Cd, Cu, Mn, Ni, Pb, V)の月別乾性沈着フラックスと大気中濃度のデータを用いた。水銀の年間乾性沈着フラックスに対する粒子状水銀の寄与率は、全国10地点の平均で26%であった。また、多くの地点で、水銀の乾性沈着フラックスと光化学オキシダント濃度との間には正の相関関係があった。このことから、わが国では、大気中のオゾンによるガス状金属水銀(Hg0)の酸化で生成したRGM(Hg2+)の沈着が水銀の乾性沈着における主要なプロセスであることが示唆される。