抄録
我々は顎口腔機能の把握を目的として咀嚼運動と咬合異常との関連について研究を行なってきた。今回は顎口腔機能異常の原因の一つとして以前より多く指摘されている非作業側の咬合干渉をとりあげ, 咀嚼運動にどの様な影響をもたらすかを明らかにすることを目的として次の様な研究を行なった。
被験者は, 干渉群として側方運動時非作業側のみに1歯ないし2歯の接触を有する30名 (顎関節および咀嚼筋に異常を認めないもの15名, 異常を認めるものは15名) を, 対照群として個性正常咬合を有し側方運動時非作業側に接触を認めない者10名を選択した。被験者にガム片側任意咀嚼を行なわせて, SGG/ASIIを用いて咀嚼運動を記録分析した。
その結果, 側方運動時の非作業側に接触部位を有する側での咀嚼では, 前頭面観に咀嚼側へ凹状に開口するパターンが特徴的にみられた。特に顎関節および咀嚼筋に異常を認めないものは, このうち開口路の方が咀嚼側にあるものが特微的に認められた。また接触部位を有しない側での咀嚼では, 閉口路の前頭面観にステップ状またはスムーズな凹状経路のみられるパターンが特徴的に認められた。
以上の事から非作業側咬合干渉が咀嚼運動に影響を及ぼし, 特徴的な咀嚼運動パターンを描く事の可能性が示唆された。