日本環境感染学会誌
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原著論文
当院で実施した多剤耐性Acinetobacter baumannii (MDRA)の院内伝播抑制策の検討
吉田 真由美益田 洋子井上 大奨平木 洋一河野 文夫
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2014 年 29 巻 2 号 p. 93-99

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抄録
  多剤耐性Acinetobacter baumannii (MDRA)は世界的に流行しているが,本邦でのMDRAの検出は比較的に稀である.この様な状況の中,当院に入院中の患者の喀痰からMDRAが検出された.感染兆候は認められず保菌状態であったが,その後5名の入院患者よりMDRAが検出された.我々は,MDRAの検出が疑いの段階で,患者を個室管理とした.また,これら6名の患者から検出されたMDRAが同一株であるか判断するためPulsed-field gel electrophoresis (PGEF)解析を行った.その結果,同一菌株が院内伝播している事が明らかとなった.さらに,検出されたMDRAはblaOXA–23–likeを保有し,MLST分析の結果International clone II (IC–2)株であることが明らかとなった.我々は,病棟の一部を閉鎖するゾーニングを実施し,同一菌株のMDRAが院内伝播している情報提供と,スタッフの手指衛生の重要性について研修会を実施した.その結果,MDRAは5名の患者に伝播したが,それ以降の院内伝播は認められていない.感染症の原因となる薬剤耐性菌の検出が疑われる場合,細菌検査の結果確定を重視するより,疑いの段階であっても早期の隔離予防策を図り,全職員へ現状の情報伝達や,日常的な手指衛生の周知徹底と改善が,院内伝播の拡大を防止する感染制御策であると示唆する.
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© 2014 一般社団法人 日本環境感染学会
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