日本顎関節学会雑誌
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顎関節痛を有する顎関節症に対する関節腔洗浄療法の治療効果
第2報: 顎関節症III b型とIV型での臨床効果の比較検討
豊田 長隆浅田 洸一荒井 智彦徳富 威彦志賀 貴之斉藤 高石橋 克禮
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1998 年 10 巻 3 号 p. 515-524

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抄録
関節痛を有する顎関節症III b型, IV型に対する顎関節腔洗浄療法の治療効果について検討した。対象は保存的治療 (平均治療期間: 10.7週) にて関節痛の軽減を認めなかった片側性顎関節痛を有する顎関節症患者41例 (III b型; 22例, IV型; 19例) である。関節腔洗浄後3, 6カ月に関節痛, 開口域の変化について判定し, 各症型間で比較検討し, 以下の結果を得た。
1) 術後3カ月で関節痛の消失を認めたものは, III b型では22例中6例 (27.2%), IV型では19例中12例 (63.2%) であった。術後3カ月での平均開口域はIII b型では38.1±6.5mm (術前平均開口域; 29.4±5.0mm), IV型では40.1±5.4mm (術前平均開口域33.9±6.1mm) であった。
2) 術後3カ月の時点で経過不良により, 関節鏡視下剥離授動術, パンピング・マニピュレーション, 再開節腔洗浄を施行した症例 (III b型; 6例, IV型; 3例) を除外し, 術後6カ月で関節痛が消失したものはIII b型16例中9例 (56.3%), IV型16例中13例 (81.3%) であった。術後6カ月での平均開口域はIII b型では41.9±5.3mm, IV型では42.8±4.8mmであった。
以上の結果より, 顎関節腔洗浄療法は骨変形を伴う顎関節症における関節痛の改善に高い奏効性を認めた。
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© 一般社団法人日本顎関節学会
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