日本顎関節学会雑誌
Online ISSN : 1884-4308
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中高齢女性の顎関節症の発症因子に関する検討
閉経後の顎関節症患者と顎関節症の臨床症状のみられない患者における生活習慣のアンケート調査による比較
鈴木 理香子角田 左武郎堀口 志津代佐藤 真弥子南雲 正男
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1998 年 10 巻 3 号 p. 525-533

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抄録
中高齢女性にみられる顎関節症は, 良好な治療効果が得られないことが多いといわれている。そこで, これらの患者を対象に顎関節症に及ぼす局所的および全身的因子を検討することを目的とし, 当科に来院した顎関節症患者と顎関節に症状がみられないその他の患者を対象にアンケート調査を行った。調査内容は既往歴および合併症, 生活習慣, 口腔習癖などである。対象患者は閉経後の顎関節症患者52名, 顎関節になんら症状がみられない患者55名である。その結果,
1. 両群の患者の20%以上に婦人科系疾患, 循環器系疾患, 骨粗鬆症がみられた。特に, 骨粗鬆症においては両群で有意差がみられた。
2. 肩こり, 耳鳴り, 腰や膝の痛みについては肩こりで有意差がみられた。
3. 食習慣においては, 顎関節症群で硬い食物を好む人が有意に多かった。運動習慣については両群で違いはみられなかった。
4. 顎関節部への外傷の既往は両群ともに5%以下であった。
5. 歯ぎしり, くいしばりなどの口腔習慣は, くいしばりが顎関節症群で有意に高かった。
以上の結果から, 顎関節症の患者は硬い食物を好み, くいしばりなどの習癖を持つ人が多いことが示された。しかも, 骨粗鬆症に罹患している人が多いことが明らかにされた。
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© 一般社団法人日本顎関節学会
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