日本顎関節学会雑誌
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10 巻, 3 号
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  • 佐々木 昇
    1998 年 10 巻 3 号 p. 487-499
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    咬合の変化が下顎頭軟骨に及ぼす影響については, これまで詳細に検索されたことはなかった。本研究ではラットを用いて, 抜歯後の下顎頭軟骨の変化を免疫組織化学的に検索した。
    ラットの片側上顎臼歯を抜歯し, 抜歯後1か月目, 2か月目, 3か月目および6か月目に下顎頭を摘出した。そして固定・脱灰後, 通法によりパラフィン連続切片を作製し, 各種コラーゲンおよびグリコサミノグリカンに対する免疫組織化学的染色を施して, 光学顕微鏡にて観察した。
    その結果, 抜歯群では対照群に比較して, I型・II型・X型コラーゲン, コンドロイチン4硫酸, ケラタン硫酸およびデルマタン硫酸プロテオグリカンの染色性が増強しており, コンドロイチン6硫酸の染色性が低下していた。
    これらの所見から, 咬合の変化は下顎頭軟骨の細胞間基質に影響を及ぼすことが明らかとなった。
  • 鶴迫 有子, 水谷 英樹, 服部 宇, 瀬上 夏樹, 上田 実
    1998 年 10 巻 3 号 p. 500-506
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    咀嚼時に下顎頭頂部に発症したと思われる顎関節包内骨折2症例についてその概要を報告する。症例1; 70歳男性。平成6年5月 に左側顎関節の疹痛と開口障害を主訴に 口腔外科を初診。症例2; 59歳女性。平成6年9月 に右側顎関節の疼痛と腫脹, 開口障害を主訴に某歯科口腔外科を受診, 紹介により名 口腔外科初診となる。2症例ともにX線, CT, MRI等により下顎頭骨折 (condylar surface fracture) を疑う所見を認め, 全麻下において骨片摘出術および下顎頭形成術を施行し, 術後3日目より開口訓練を開始, 現在開口距離40mmまでの改善を認め疹痛もなく経過良好である。これら2症例について骨折片の病理組織的検索を行い骨折前に下顎頭の退行性変化が生じていたことが推測された。
  • 第1報: 関節腔洗浄単独例とステロイド剤併用例との比較検討
    豊田 長隆, 浅田 洸一, 荒井 智彦, 徳富 威彦, 志賀 貴之, 斉藤 高, 石橋 克禮
    1998 年 10 巻 3 号 p. 507-514
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    関節痛を有する顎関節症患者に対する関節腔洗浄単独による治療効果, ならびにステロイド剤注入の影響について検討する目的に, 関節腔洗浄療法単独 (以下, 単独群) と関節腔洗浄後にステロイド剤注入をおこなった (以下, ステロイド群) 2群の治療法に無作為にふりわけ, その臨床効果の違いについて検討した。
    対象は, 保存的治療にて関節痛の改善を認めなかった片側性関節痛を有する顎関節症患者49例 (ステロイド群; 26例, 単独群; 23例) である。術後1週から術後3カ月での関節痛, 開口域の経時的変化について, 各群間で比較検討をおこない, 以下の結果を得た。
    1) 関節痛改善率は, 全ての判定時期でステロイド群と単独群間で統計学的有意差は認めず, 術後3カ月でステロイド群では76%, 単独群では71.5%に関節痛の改善を認めた。
    2) 開口域においても, 全ての判定時期でステロイド群と単独群間で統計学的な有意差は認めず, 術後3カ月での平均開口域はステロイド群で39.4±6.9mm, 単独群では40.6±4.5mmであった。
    以上の結果より, 関節痛を有する顎関節症に対し, 関節腔内の洗浄操作は臨床症状の改善に寄与すると思われた。
  • 第2報: 顎関節症III b型とIV型での臨床効果の比較検討
    豊田 長隆, 浅田 洸一, 荒井 智彦, 徳富 威彦, 志賀 貴之, 斉藤 高, 石橋 克禮
    1998 年 10 巻 3 号 p. 515-524
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    関節痛を有する顎関節症III b型, IV型に対する顎関節腔洗浄療法の治療効果について検討した。対象は保存的治療 (平均治療期間: 10.7週) にて関節痛の軽減を認めなかった片側性顎関節痛を有する顎関節症患者41例 (III b型; 22例, IV型; 19例) である。関節腔洗浄後3, 6カ月に関節痛, 開口域の変化について判定し, 各症型間で比較検討し, 以下の結果を得た。
    1) 術後3カ月で関節痛の消失を認めたものは, III b型では22例中6例 (27.2%), IV型では19例中12例 (63.2%) であった。術後3カ月での平均開口域はIII b型では38.1±6.5mm (術前平均開口域; 29.4±5.0mm), IV型では40.1±5.4mm (術前平均開口域33.9±6.1mm) であった。
    2) 術後3カ月の時点で経過不良により, 関節鏡視下剥離授動術, パンピング・マニピュレーション, 再開節腔洗浄を施行した症例 (III b型; 6例, IV型; 3例) を除外し, 術後6カ月で関節痛が消失したものはIII b型16例中9例 (56.3%), IV型16例中13例 (81.3%) であった。術後6カ月での平均開口域はIII b型では41.9±5.3mm, IV型では42.8±4.8mmであった。
    以上の結果より, 顎関節腔洗浄療法は骨変形を伴う顎関節症における関節痛の改善に高い奏効性を認めた。
  • 閉経後の顎関節症患者と顎関節症の臨床症状のみられない患者における生活習慣のアンケート調査による比較
    鈴木 理香子, 角田 左武郎, 堀口 志津代, 佐藤 真弥子, 南雲 正男
    1998 年 10 巻 3 号 p. 525-533
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    中高齢女性にみられる顎関節症は, 良好な治療効果が得られないことが多いといわれている。そこで, これらの患者を対象に顎関節症に及ぼす局所的および全身的因子を検討することを目的とし, 当科に来院した顎関節症患者と顎関節に症状がみられないその他の患者を対象にアンケート調査を行った。調査内容は既往歴および合併症, 生活習慣, 口腔習癖などである。対象患者は閉経後の顎関節症患者52名, 顎関節になんら症状がみられない患者55名である。その結果,
    1. 両群の患者の20%以上に婦人科系疾患, 循環器系疾患, 骨粗鬆症がみられた。特に, 骨粗鬆症においては両群で有意差がみられた。
    2. 肩こり, 耳鳴り, 腰や膝の痛みについては肩こりで有意差がみられた。
    3. 食習慣においては, 顎関節症群で硬い食物を好む人が有意に多かった。運動習慣については両群で違いはみられなかった。
    4. 顎関節部への外傷の既往は両群ともに5%以下であった。
    5. 歯ぎしり, くいしばりなどの口腔習慣は, くいしばりが顎関節症群で有意に高かった。
    以上の結果から, 顎関節症の患者は硬い食物を好み, くいしばりなどの習癖を持つ人が多いことが示された。しかも, 骨粗鬆症に罹患している人が多いことが明らかにされた。
  • 藤田 宏人, 森杉 敏明, 川上 哲司, 杉村 正仁
    1998 年 10 巻 3 号 p. 534-546
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    近年, 炎症を起こした関節の滑液中には活性化されたマトリックスメタロプロテアーゼ (MMP) が検出されることから, 顎関節症の発症にMMPが関与する可能性が提唱されつつある。われわれは, 顎関節症患者より採取した滑液について蛍光基質ペプチドを用いたMMP活性の測定を行い, ウエスタンブロット法による解析結果と比較検討することで, 本測定法の有用性を検討した。
    顎関節症患者より採取した滑液において蛍光基質ペプチド分解活性の充進が認められた。この活性の亢進は, 関節部疹痛や顎関節滑液の貯留を認めた症例において有意に活性の亢進が起こっており, 本活性が顎関節炎と密接に関連することが示唆された。
    ウエスタンブロット法により顎関節滑液中に潜在型MMP-1, 活性型MMP-2, 潜在型および活性型MMP-3の存在が示された。特に活性型MMP-3を有する検体では, 蛍光基質ペプチド分解活性も非検出群に比して高い傾向を示すことから, 顎関節症患者の滑液中には少なくとも活性化したMMP-3の増加に伴う蛍光基質ペプチド分解活性の充進が起こっていると考えられた。さらに, 活性型MMP-3は顎関節に炎症所見が認められる検体に多く検出されていたことから, MMP-3は顎関節症の炎症マーカーどなりうることが示唆された。
    蛍光基質ペプチドを基質としたMMP活性測定法は, 顎関節症における関節炎マーカーとしてのMMP活性を測定する手段として有用であることが示唆された。
  • 石丸 孝則, 早津 良和, 篠崎 文彦
    1998 年 10 巻 3 号 p. 547-551
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    コンピューターシミュレーションにより, 非侵襲的に顎関節腔内を画像化し, あたかも関節鏡視を行っているかのように内部構造を観察する方法の開発を試みた。
    元画像はインターネット上の精細な凍結軸位断層像をもつVisible Humanを用い, 02ワークステーション (シリコングラフィクス社) 上にて, 顎関節三次元再構築を三次元画像処理ソフトウェアAnalyzeAVWを使用して行った。構築像内へのfly-through (突入飛行) シミュレーションにより, 関節鏡シミュレーション像は得られた。
    上関節腔内の滑膜, 関節円板, 円板後部組織等の関節内部構造が, 表面の滑択さや凹凸不整等の形状で明瞭に識別確認された。また, 関節円板の一部欠損も確認された。
    顎関節鏡シミュレーションは, 関節構造検索のために今後応用されうるものと考えられた。
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