日本顎関節学会雑誌
Online ISSN : 1884-4308
Print ISSN : 0915-3004
ISSN-L : 0915-3004
顎関節円板転位における臨床所見とMRI所見の比較検討
佐々木 太朗青村 知幸田村 潔宮手 浩樹濤岡 一司工藤 啓吾
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 11 巻 1 号 p. 18-23

詳細
抄録

われわれは顎関節内障における関節円板の転位方向および復位の有無を観察し, 関節痛, 開口障害, 関節円板の変形, 下顎頭の骨変形および下顎頭の滑走との関連について比較検討した。
対象は, 1992年から1997年までの6年間に当科を受診し, MR撮像を行った男性72名, 女性269名の顎関節内障患者341名, 682関節であった。閉口位から最大開口位までの矢状断像と冠状断像には1.5 Tesla超伝導型MR装置を用いて撮像した。
関節円板の転位方向は, 前方転位が367関節, 前内方転位が35関節, 内方転位が9関節, 転位なしが271関節であった。また, 復位が認められたのは, 前方転位が166関節, 前内方転位が7関節, 内方転位が4関節であった。本検討では関節痛, 開口障害, 関節円板の変形および下顎頭の骨変形と関節円板の転位方向に関連性は認められなかった。関節円板前方転位例では非復位例の関節痛,開口障害, 関節円板の変形, 下顎頭の骨変形などが復位例のそれに比べて, より高度であった。しかし, 前内方転位例および内方転位例では関節痛, 開口障害, 関節円板の変形, 下顎頭の骨変形などは, 非復位例と復位例間に有意差を認めなかった。
結論として, 関節痛, 開口障害, 関節円板の変形や下顎頭の骨変形などの臨床所見は, 復位性に比べ非復位性で強く生じ, 転位方向による影響は小さかった。また, その傾向は前方転位例で顕著であった。

著者関連情報
© 一般社団法人日本顎関節学会
前の記事 次の記事
feedback
Top