日本顎関節学会雑誌
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パンピングマニピュレーション施行後のスプリント療法に関する臨床的検討
本田 公亮夏見 淑子奥井 森前田 常成坂田 みどり高橋 由美子浦出 雅裕
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2002 年 14 巻 2 号 p. 188-192

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抄録

非復位性の関節円板前方転位症例に対し, 円板の復位を目的にパンピングマニピュレーション (以下PMと略す) を試み, 後続してスプリント療法を行うことが多い。本研究ではPM施行後にスプリント療法を行った場合と行わなかった場合とを比較し, スプリント療法がPMの治療効果にどの程度寄与しているかについて検討した。2000年9月から2001年3月までの6か月間に兵庫医科大学病院歯科口腔外科に来院した顎関節内障患者のうち, 片側性非復位性関節円板前転位と診断された43名 (男性7名, 女性36名, 平均年齢37.9歳) を対象とした。2%リドカインおよび生理食塩水にてパンピング操作を加え, マニピュレーションを行った。PMにより臨床的にアンロックが得られた27例中, クリックやロックに対する明確な治療的下顎位が得られた16例にアンテリアリポジショニングスプリント (以下ARSと略す) を, 治療的下顎位が不安定, およびPMによりアンロックが得られなかった16例中8例にスタビライゼーションスプリント (以下SSと略す) を装着した。一方, 歯冠修復治療や矯正治療の途中のためにスプリントの作製が困難な19例を対照群とし, 1か月間の経過観察を行った。アンロック後に再ロックしなかった症例は, アンロックが得られなかった, または再ロック例に比べPM後の経過予後が良好であったが, その治療効果を維持するためにはPM後のスプリント療法 (ARS) が有用であった。一方, アンロックが得られなかった症例群におけるスプリント療法 (SS) は, 治療効果に非装着群と差がみられなかった。

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© 一般社団法人日本顎関節学会
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